プレミアリーグの時間BACK NUMBER
選手も賛否両論のプレミア再開案。
「実験用マウス」扱いとの声も。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/05/22 19:00
サッカーボールにも消毒液。プレミア再開に向けての練習は徹底管理の中で行われている。
カンテは2日目に練習取り止め。
ディーニーは、自身を含む非白人に被害者が多い点も懸念もしている。
個人的には夜勤の看護師さんに白人がほとんどいなかった入院経験からも、階級社会の英国ではリスクの高い職場に非白人の労働者が多いことが背景にあるようにも思えるが、新型コロナウイルスによる黒人男性の死亡率が白人男性の2、3倍に上るというデータは、英国内の事実として認識されている。
自覚症状はないが陽性だった検査結果を「驚きと不安」と共に公表したエイドリアン・マリアッパも、フィジー人とジャマイカ人の血を引く非白人系のワトフォード選手だ。
第1フェーズ開始2日目には、チェルシーのエンゴロ・カンテが練習参加を取り止めた。ベンツやレンジローバーが戻ってきたクラブの駐車場からは、シルバーのミニクーパーが消えたわけだ。検査結果は陰性だったようだが、兄を心臓発作で失い、自身も練習直後にロッカールームで倒れた経験を持つ彼が、感染の不安を覚えるのも無理はない。
1クラブ40名までの検査は週に2度行われる。
しかし第2、第3回の検査で感染確認事例が増え続けたとしたら?
同時に、気温20度台の晴天が続くようになった国内で、外出機会が増えた一般人に感染拡大第2波の兆候が見られたとしらたら?
おそらく、政府による規制は元に戻され、6月1日からの予定だったプロ・スポーツの試合開催許可は見送られ、「プロジェクト・リスタート」計画も第2フェーズへの移行が延期されることになるだろう。
もし日程を完了できない場合は?
実際、リーグ関係者の会合では、今季日程を完了できない場合の対処も議題の1つにはなっている。
プレミアリーグ流に言えば「カーテイルメント」だ。同じシーズンの「打ち切り」でも、「短縮」を意味するこの単語は、ロックダウンが開始された当初にメディアを賑わした「ヌル・アンド・ボイド(無効)」よりも、確かに強引な印象が薄い。
今季を「短縮」する解決策としては、ホームとアウェイの違いを考慮した「ポイント・パー・ゲーム」が最も現実的と見られている。
中断前の第29節終了時点の平均ポイントを残り試合に適用して勝ち点を計算すれば、消化試合数が1試合少ないマンチェスター・シティ、アーセナル、シェフィールド・ユナイテッド、アストンビラにも不公平ではない。しかも、ホームゲームとアウェイゲームを分けてポイント数を計算することから、ホームアドバンテージがなくなる中立的スタジアムでの今季再開に反対中のクラブにも説得力がある。
ホームで15戦全勝、アウェイでも14試合で4ポイントしか落としていないリバプールは、この計算方法でも断トツ優勝となる。