熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
本田所属ボタフォゴの赤字141億円。
鳥栖以上の経営難も倒産しない理由。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAP/AFLO
posted2020/05/11 11:30
本田圭佑の移籍決定は現地でも大きな話題になった。そこにはサッカー面だけでなく、マーケティング的戦略もあるのだろう。
累積赤字140億円でも倒産しない?
ブラジルの場合、欧州各国や日本のようなクラブライセンス制度がなく、クラブの経営難は個々の問題として長年放置されてきた。そのせいもあって、赤字の金額が日本とは桁違いだ。
実は累積赤字が最も多いのは、本田が在籍するボタフォゴである。2017年以降、3年連続で赤字を計上しており、昨年末の累積赤字が約7億3100万レアル(約141億円)にのぼる。以下、インテルナシオナルの約6億6900万レアル(約130億円)、フルミネンセの約6億2900万レアル(約123億円)と続く。
累積赤字が100億円を超えるクラブが5つ、20億円を超えるクラブが21もある。
ところがこれほど多額の負債を抱えながら、倒産や閉鎖が懸念されているクラブはほとんどない。
その最大の理由は、ほとんどのクラブが非営利団体だから。
国や地方自治体への各種税金、選手、コーチングスタッフ、職員らへの給料、出入り業者への各種支払い、電気、水道、ガスなどの公共料金が未払いの場合、個別に支払いを求められて訴えられ、クラブの資産が借金の抵当に入ることはあっても、クラブが破産して閉鎖される事態にはなかなかならない。
社会的影響が大きい反面、不払いも。
この国のフットボールクラブは、プロ部門以外に会員(ソシオ)のための総合スポーツクラブや社交クラブなどのソーシャル部門を持っていることが多い。クラブが潰れるとこれらの部門も消滅することになり、社会的な影響が大きいから、国や地方自治体が税金を厳しく取り立てることは少ない。その反対に、結果的に減額してやることが多い。
それがわかっているので、多くのクラブは税金の支払いが遅れても頓着しない。
また、ブラジルでは選手やコーチングスタッフへの給料支払いの遅滞や不払いが頻発する。
ボタフォゴが本田圭佑の獲得を目指していると聞いたとき、「入団はありえない」と思った。その最大の理由は「本田の給料を払えるはずがない」と考えたからだ。
そして、この危惧が当たりつつある。