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本田所属ボタフォゴの赤字141億円。
鳥栖以上の経営難も倒産しない理由。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAP/AFLO
posted2020/05/11 11:30
本田圭佑の移籍決定は現地でも大きな話題になった。そこにはサッカー面だけでなく、マーケティング的戦略もあるのだろう。
本田は給与カットを受け入れると発信。
4月末にリオのメディアが「ボタフォゴは3月以降、大多数の選手、コーチングスタッフに給料を払っていない」と報道。その後、ボタフォゴの役員も給料支払いが遅れていることを認めた。
4月26日、本田は自身のツイッターで、「プロスポーツチームに関して、経営者が直ぐにでも年俸の高い選手から順に給与カットのお願いしにいくべき。誠意を持って話せば多くの選手は理解を示すはず。じゃないと潰れるチームが増えて結果的にファンが悲しむことになる」と考えを示した(原文ママ)。また地元紙「グローボ」でも、本田が3月分の給与返上を申し出たことも伝えられた(クラブは申し出を断ったとのこと)。
本田はチーム内で給料が高い方だから、自身の給与カットを受け入れる意向を示していることになる。なおこのコメントや行動に対して地元メディアやファンなどから賞賛の声が上がった。
一方、ボタフォゴの役員は「選手の給与は減額しない」と語っている。しかし、きちんと給料を払わないでおいて「減らさない」と言っても説得力は感じられない。
ちなみに、2月8日に本田が入団発表をした翌日の試合で敗れて解任されたアウベルト・ヴァレンティン前監督は「クラブが給料の一部、ボーナス、契約期間途中の解任による違約金の合計240万レアル(約4630万円)を払っていない」として労働裁判所に訴えている。
高原が所属した頃のボカでも……。
思い出すのが、2001年8月から12月までアルゼンチンの名門ボカ・ジュニオルズに在籍したFW高原直泰のケースだ。
2001年末、アルゼンチン経済が危機的状況に陥った際に高原に給料が払われていない、という話をアルゼンチン人記者から聞いた。
「ボカは(エースでアルゼンチン代表MFの)リケルメらにも給料を払っていないのか」と尋ねたところ「いや、中心選手には払っている。控えや故障している選手には払わないんだ」と返された。
クラブが選手によって給料を払ったり払わなかったりする(ことがありうる)。その事実に愕然とした。