熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
本田所属ボタフォゴの赤字141億円。
鳥栖以上の経営難も倒産しない理由。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAP/AFLO
posted2020/05/11 11:30
本田圭佑の移籍決定は現地でも大きな話題になった。そこにはサッカー面だけでなく、マーケティング的戦略もあるのだろう。
シャムスカが大分で監督だった頃。
一方、2005年から2009年まで大分トリニータの監督を務めたペリクレス・シャムスカから聞いた話は、これとは逆だった。
彼は「2009年にクラブが経営難になったが、そのときでも選手、コーチングスタッフ、職員の全員にきちんと給料が支払われていた」と驚いていた。
日本ではクラブがどんな苦境にあっても給料を払うのが当たり前だが、南米ではそうではない。
ブラジルのクラブは自分から望まない限り、潰れることはほとんどない。しかし、だからといって選手、コーチングスタッフが給料を受け取れるとは限らない、という悲しい現実がある。
本田の給与水準を踏まえると。
地元メディアの報道によれば、本田のボタフォゴでの基本給(月額)は20万レアル(約386万円)で、これに試合出場数、得点、アシストなどに応じたボーナス、自身のグッズ売り上げの20%が加算されるという。
本田の推定年俸は、2014年~2016年までのACミラン時代が7億7000万円、2017年のパチューカ(メキシコ)時代が4億5000万円、2018年のメルボルン・ビクトリー時代が3億2000万円とされる。今、もしJリーグでプレーしたら、2億円を下ることはないだろう。
しかも、リオでの住宅費、使用する防弾車とその運転手の給料、専属トレーナーの給料、現地で雇用したポルトガル語教師への報酬などをすべて自分で負担しており、これらの費用が毎月100万円程度はかかっているのではないか。
元々、設定されている給与水準が本来期待できるものよりはるかに低く、しかも支払いが遅れがちで、必ず支払われるという保証はない。本田にとって、ボタフォゴでプレーすることで被る経済的損失は少なくない。
今後、ボタフォゴの給料遅配が続くようなら――来年に延期された東京五輪を待たずして退団する、という悲しいケースにはならないでほしい。