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幻のセンバツ出場校監督が挙げた
「最も印象に残る教え子」は誰だ?
text by
矢崎香耶子(Number編集部)Kayako Yazaki
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/05/07 20:30
昨夏の甲子園で明石商をベスト4に導いた狭間監督。明徳義塾でのコーチなどを経て、2007年に監督に就任した。
秀岳館で“化けた”投手。
潮崎哲也(元西武)や小園海斗(広島)らの指導でも知られる県岐阜商・鍛治舎巧監督も、3季連続ベスト4の左腕が“化けた”過程を振り返る。
「秀岳館時代だと、川端健斗(立教大)ですね。練習試合で出逢った中学2年生のときは最速110kmの弱小チーム4番手投手でした。私が就任した最初の年に選手として入学し、1年秋には130km超をマーク。2年次センバツからは4季連続甲子園出場に導く中心投手に。MAXは148kmとなり、U18世界大会にも選出。きゃしゃで弱々しい投手が、地道に努力を重ね完投能力を備えた一流投手になってくれました」
明豊・川崎絢平監督が挙げたのは、夏8強へと進んだ2017年に抑えを務めた溝上勇(太成学院大)。
「ずっとメンバー外でしたが、自ら『スコアラーをするので遠征に連れていってください』と申し出てきました。それで、練習試合の終盤に1イニングだけ投げさせてみると、どんどん抑えるように。
県大会では背番号20、本大会では18とぎりぎりでのベンチ入りでしたが、そこでも結果を出し続け、ついには甲子園でも大活躍。チャンスをもらえる可能性を自分で考えて行動に移した彼の姿に、生徒の可能性を信じることの大切さと、視野を広げることの重要性を再認識させられました」
中学時代から将来を嘱望された選手が多い強豪校だからこそ、期待を越える変貌ぶりを見せた選手は印象に残りやすいのかもしれない。
派手に目立つ選手ばかりというわけではない。
そんな中、「目立つ方ではなかった」という選手も。伊藤一輝(三菱重工広島)をメンタル面や姿勢で評価したのは、中京大中京・高橋源一郎監督。
「足腰を鍛えるため、学校までの片道15kmを自転車で通学させていました。普通の選手は引退すると電車通学を選ぶようになるんですが、彼は自主的に卒業までずっと続けた。センスとかコントロールとかが特別光るというわけではなかったですが、大学、社会人までやれているのはそういった姿勢が大きいと思います」
選手も指導者も学び、成長を続ける高校野球。「高校での指導歴は3年目のため、これから印象に残る投手を多く育成したい」という鹿児島城西・佐々木誠監督を含め、今後も全国の指導者がまだ見ぬ大器を育ててくれるはずだ。彼らが沸かせてくれる未来の聖地にも期待したい。
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