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中量級なのに全日本柔道の“名物”。
加藤博剛、小よく大を制す極意。
posted2020/04/29 19:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO SPORT
毎年4月29日、東京の日本武道館で行われてきた全日本選手権は、柔道における伝統と格式ある大会である。
1948年に始まり、以降、ほぼ欠かすことなく開催され、数々の名勝負が繰り広げられてきた。
ロサンゼルス五輪無差別級金メダルの山下泰裕、ロサンゼルス、ソウル両五輪95kg超級金メダルの斉藤仁が3年続けて決勝でしのぎを削り、その後は小川直也が7度優勝を飾り、その後も篠原信一と井上康生、鈴木桂治らが活躍。
昨年まで最重量級の五輪代表選考大会を兼ねていたこの大会は、無差別級で実施されていることも特徴だ。だから重量級の選手が中心とはいえ、軽い階級の選手が出場することもあった。
準決勝では巴投で技ありを奪った。
そんな特色を持ち長い歴史を重ねてきた中で、思いがけない勝者が現れ、話題となった年がある。
2012年の大会だ。
優勝候補にあげられていたのは、前年に優勝していた鈴木、2010年の世界選手権無差別級でテディ・リネールを破り金メダルを獲得していた上川大樹、2010年全日本優勝の高橋和彦らだった。
さらに世界選手権などで活躍してきた棟田康幸、高井洋平の両ベテランも健在。
だが、大会は意外な様相を見せる。
上川も高橋も準々決勝で敗退したのである。
そんな中、好調を見せたのが加藤博剛であった。初戦となった2回戦で長尾翔太に巴投で一本、3回戦では香川義篤に袖釣込腰で一本勝ち。
そして準々決勝では棟田を破ると、準決勝で百瀬優から巴投で技ありを奪って決勝に進出する。