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中量級なのに全日本柔道の“名物”。
加藤博剛、小よく大を制す極意。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO SPORT
posted2020/04/29 19:00
2012年全日本柔道選手権決勝、加藤は身長で19cm、体重で45kg、自分より上回る石井竜太に隅落で一本勝ちを収め、優勝した。
自分より大柄な選手に対峙する独自のスタイル。
国士舘高校の後輩の斉藤に勝ったあと、「先輩は偉大だろう。こんなことでめげるなよ」と声をかけたという加藤は、試合後、こう語った。
「今回、最年長(33歳)で出て、決勝まで行かせてもらって申し訳ないです」
冗談まじりに笑顔を見せたが、「何だろう、加藤流って言うんですかね」と関係者が評するように、「大きい選手が相手だと楽しい」という思いとともに技の工夫やアレンジに力を注ぎ、自分より大柄な選手に対峙する独自のスタイルを築いたからこそだ。
出場回数は11度、棟田が持つ15度の史上最多出場記録の更新も視野にある加藤は、以前、こんな話もしていた。
「やっぱり全日本は特別な大会です。場内を沸かせて、(全日本の)名物おじさんになりたいです」
いや、もはや全日本選手権の「風物詩」とも言って差し支えない実績は十分残しているし、小よく大を制す、の柔道の醍醐味の一端も伝えてきた。
残念ながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年は大会が史上初めて延期となった。
でも、いずれ行われる全日本選手権へと目線は向けているはずだ。
石垣島出身、千葉県警に勤務する加藤博剛の、再びの雄姿を楽しみにしたい。