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医療組織に経営マンション50軒開放。
困難の英国をプレミア選手が手助け。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/04/07 07:00

医療組織に経営マンション50軒開放。困難の英国をプレミア選手が手助け。<Number Web> photograph by Getty Images

子供たちに食事を届けるための寄付を行なったラッシュフォード。こういった働きかけが今、サッカー選手がすべきことだ。

「おうちにいろ」のSNS投稿。

 プロサッカー選手は、しばしば「庶民にとってのお手本にあるまじき行為」として素行が非難される。時には要求が厳し過ぎると思えることもあるが、憧れの人を真似たがる子供たちにとっては特に絶大な影響力を持つ存在であることは確か。

 いまから7年前の4月、相手DFに噛み付いたルイス・スアレス(当時リバプール)に対しては、7歳の息子を持つ父親でもあったデイビッド・キャメロン首相が「最低最悪の見本」と発言せずにはいられなかったほどだ。

 それだけに外出が制限される非常事態の最中、選手が本人や所属クラブの公式アカウントを通じ「ステイ・アット・ホーム」などのハッシュタグをつけたSNS投稿で自宅待機を呼びかける動きは歓迎できる。

 カップルでエクササイズをするジェイミー・バーディー(レスター)やマルコス・アロンソ(チェルシー)の映像には、各家庭の親御さんたちも感化されるかもしれない。

 また「退屈な男」として有名なジェイムズ・ミルナー(リバプール)は、得意の自虐的ユーモアを発揮。1週間分のティーバッグを曜日毎に仕分けしたり、庭の芝生の長さを定規で計ったり、子供の家庭学習用に鉛筆を削ったりする姿を投稿。フォロワーを笑わせながら、外出制限を守るように訴えている。

 スウィンドンやカーライル(ともに4部)の選手が「スケジュールを立てて規則正しい生活を」などとツイートしたところで、国際的には「誰だ、これ?」という世界だろう。

 だが、今季リーグ上位の前者は平均8000人弱、下位の後者も4000人強の平均観客をホーム戦19試合で動員している。それがイングランドのサッカー界だ。南西部の町スウィンドンでも、北西部の町カーライルでも「そうしよう」と思うキッズがいるに違いない。

ラッシュフォードは子供のために。

 まだ22歳の若さながらサッカー選手としての立場を弁え、その影響力を社会のために役立てているマーカス・ラッシュフォードには頭が下がる。

 このマンUのストライカーは、ピッチ内では怪我で1月半ばから攻撃をリードすることはできずにいるが、ピッチ外では先頭に立って地元支援をリードしている。つい先日も国内で飢餓と食品ロスの削減に取り組む慈善団体『フェアシェア』を通じ、10万ポンド(約1400万円)の寄付金を集めたばかり。

 SNSでのQ&Aを約束して賛同者を募った当人は、目標額到達を「これで40万人の子供たちに食事を届けられる」とツイートして喜んでいた。筆者はその前週に学校閉鎖が発表された時点で、親が大変だなとは思っても給食を食べられなくなる子供の立場にまでは意識がいかなかった。

 その点、ラッシュフォードは学校での昼食を逃せば母親が夜に仕事から戻るまで食事がない少年時代を過ごし、以前から地元マンチェスターの子供たちやホームレスへの支援活動に積極的な姿勢を見せる。給食の代わりに「フリー・ミール」を提供する方法を考え始めたのだ。

【次ページ】 FAが配信予定の教育&娯楽コンテンツ。

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