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医療組織に経営マンション50軒開放。
困難の英国をプレミア選手が手助け。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/04/07 07:00

医療組織に経営マンション50軒開放。困難の英国をプレミア選手が手助け。<Number Web> photograph by Getty Images

子供たちに食事を届けるための寄付を行なったラッシュフォード。こういった働きかけが今、サッカー選手がすべきことだ。

シュマイケルは高齢者に対して。

 その倍額を差し出したのはレスターのキャスパー・シュマイケルだ。33歳の守護神が寄付を行なった団体は、3カ月近い自己隔離の対象となる70歳以上の高齢者に生活必需品を届ける「エイジ・UK」である。

 そして4月1日には、ボーンマスで指揮を執る42歳のエディ・ハウが、プレミア監督としては初めて入場料収入のないクラブ財政を救うべく給与削減に合意している。

 こうした個人レベルの行動はもちろん、プレミア勢が集団として支援態勢を示してくれれば理想的だ。国内サッカー界の「持てる者」ならば、それが常識的だと言ってもよい。ボーンマスでは選手以外の全職員が一時解雇扱いを受けている。プレミアでは先陣を切ったニューカッスルに続き、トッテナムとノリッジに次ぐ4番目の例だ。

解雇前に選手給与の削減合意だった。

 英国では月額2500ポンド(約35万円)を上限に、少なくとも3月から3カ月間は、一時解雇された勤め人の給与の8割相当を国が支払う緊急措置が発表されている。つまり、国民の税金で賄われるということ。この措置はリバプールも続いている。

 巨額の放映権収入とスポンサー収入で潤うプレミア勢は、職員の給与カバーを庶民に頼るべきではない。一時解雇に踏み切る前に、選手給与の一部放棄や削減に関する合意をプレミアの全体方針として取り付けるべきだった。

 フットボールリーグ(2~4部)では、すでにリーズとバーミンガムの2部勢で選手が同様の措置を受け入れているが、平均年俸約360万ポンド(5億円強)のプレミア選手たちは、2部をはるかに凌ぐ金銭的体力を備えている。1人が1週間分の報酬を我慢するだけでも、一般職員にとっては大きな助けとなる。

 億万長者級の生活を送る選手にすれば、平均の週給相当額6万ポンド(約840万円)をもらい損ねたところで、どうということはないと思われる。だが、それは国民の平均年収の2倍を超える額なのだ。

【次ページ】 下部リーグを支える“軍資金”を。

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