プレミアリーグの時間BACK NUMBER
医療組織に経営マンション50軒開放。
困難の英国をプレミア選手が手助け。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/04/07 07:00
子供たちに食事を届けるための寄付を行なったラッシュフォード。こういった働きかけが今、サッカー選手がすべきことだ。
FAが配信予定の教育&娯楽コンテンツ。
学習に関しても、サッカー界は力になれる。
例えば、アーセナルである。2冠を達成した1998年から「ダブル・クラブ」の名称で、クラブをテーマにした英語教育とサッカー教室(各45分ずつ)を地元小学校に提供している。また、2004年に無敗でリーグ優勝を成し遂げた「インビンシブルズ」をテーマにした“ホーム・スクール”用の新教材を用意。北ロンドンの家庭では、頼まれてもいないのに手伝いたがる、アーセナルファンのお父さんたちが続出しても不思議ではない。
FA(サッカー協会)も、ソーシャルメディアをプラットフォームとして、教育と娯楽を兼ねたコンテンツを配信予定である。“Football's Coming Home”ならぬ“Football's Staying Home”という合言葉からして、イングランドならではの試みと言える。
ザハはマンション50軒をNHSに!
この国のトップリーグでは、若手からベテランまで一軍にミリオネアが揃う。ウイルス感染の危険に対する不安は同じでも、一般庶民のように自身の生活や家族を養うことに不安のないプレミアリーガーたちは、「影響者」のみならず「救世主」にもなり得る存在だ。
実際、26歳になったばかりのアンドリュー・ロバートソンのように、祖国スコットランドはグラスゴー市内のフードバンクに多額を寄付した選手もいる。リバプールの左SBは、クラブのお膝元への寄付金カンパにも参加。生活困窮者をサポートするフードバンクは通常、配布する食料の4分の1を試合が開催される地域内のスタジアムから譲り受けているのだ。
27歳のウィルフリード・ザハは、ロンドン市内に持つマンション50軒をNHS(国営医療サービス)スタッフに開放。クリスタルパレスのエースは、ビジネス利用者向けの賃貸物件を扱う不動産会社の共同経営者という顔も併せ持つ。
29歳のアーロン・ラムジーは、アーセナルを去ってユベントスの選手となっても、ユース時代を過ごしたカーディフへの支援を忘れない。地元のチャリティー団体が市内のNHS職員への援助金を募り始めると、目標額だった1万ポンド(約140万円)を寄付している。