プレミアリーグの時間BACK NUMBER
医療組織に経営マンション50軒開放。
困難の英国をプレミア選手が手助け。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/04/07 07:00
子供たちに食事を届けるための寄付を行なったラッシュフォード。こういった働きかけが今、サッカー選手がすべきことだ。
下部リーグを支える“軍資金”を。
なおクリスタルパレスの前オーナーは、試合延期が決まった当初から、全職員の給与支払い継続を公約し、スポーツ専門ラジオ局『トークスポーツ』のインタビューではプレミア勢による“ファイティング・ファンド”を提案してもいた。
基金の提供先は収益に占める入場料収入の割合が高いところ。つまり、試合のないダメージが大きい下部リーグ勢だ。いわく「プレミアの選手たちが、一律2割の減俸を3カ月間受け入れただけで、リーグ全体で1億7000万ポンド(240億円弱)を工面できる」とのこと。
これはデロイト社が監査を終えている一昨季の会計報告によれば、4部(9100万ポンド)はもちろん、3部(1億4600万ポンド)全体の年間収益を上回る“軍資金”となる。
1992-93シーズンにイングランドのプロリーグから独立したプレミアは、「自己隔離」を続けることで戦力と収益力で下部リーグに圧倒的な差をつけた。だが、力を合わせて新型コロナウイルスと戦わなければならないいまこそ、物理的に手を取り合うことは勧められないが、周囲に手を差し伸べるべきときを迎えている。
そうすれば「サッカーの母国」に平常が戻る暁には、これまで以上に大切な生活の一部として、庶民にとってのサッカーが存在しているだろう。
それだけの魅力と能力が、この国のサッカー界にはある。