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湘南DJ、K-1、世界まる見え。
声の表現者・三村ロンドの流儀とは。
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byRyohei Hayashi
posted2020/04/05 11:50
2014年から湘南ベルマーレのスタジアムDJを務める三村ロンド氏。アウェイの地まで足を運び、サポーターとともにベルマーレを応援している。
K-1も担当、Jリーグとの違いは?
一方、2004年にはナレーターであるにも関わらず、アメリカプロレス団体であるWWEの実況を担当した。この時は慣れない仕事に不安はあったが、「WWE好きの後輩の家にこもったり、毎回先に映像を見させてもらって自分のネタ帳に書いたり」と、相変わらずのとことんこだわる姿勢でやりきって見せた。
これが後に「WWEの番組を見ていたスタッフが、煽りVのナレーションをお願いしてくれた」と言うように、現在の新生K-1の選手紹介映像のナレーションの仕事につながり、今ではK-1の声の人としても認知されるようになっている。
面白いのが、湘南の選手紹介とK-1の煽りVで雰囲気が大きく違うところ。湘南ではピッチに立った選手たちとサポーターをつないで“みんなで一緒になって戦う”ための盛り上げ方をする一方で、K-1の煽りVでは「静かに淡々と煽ったり、変化をつけたり、振り幅を持たせるように」してリングの上に立つ二人と共にファンの熱気を沸々と高めるような演出をしている。どちらにも根底に「選手へのリスペクト」がある中で、それぞれの舞台に合った手法を取っていることに“声の演出”の奥深さを感じることができる。
大切なのは準備、現場に赴くこと。
真摯な姿勢を評価してもらい、次の仕事を得る。そのサイクルを続けてきた。時とタイミングはあるかもしれない。だが、それを引き寄せるだけのことをやってきた自負があるのも事実だ。
「2015年に当時の湘南の曹(貴裁)監督がスローガンに掲げたのが“証明”という言葉だった。期待してもらっている人のために頑張る。そうでない人にはちゃんとした結果で証明すると言っていたけど、あれはすごく響いている。周りから何を言われようとも、真摯に受け止めてやり続けるしかない。証明し続けるしかないと思ってやってきたことが今につながっている」
用意された場所でしっかりと自分自身の力を証明する。言葉にすれば簡単だが、成立させるためには何より準備が必要となる。その秘訣を三村は“現場に赴く”ことだと説く。
「必ず年に1回は現場に足を運ぶようにしている。それはナレーションの仕事でもそう。普段ナレーターの人は現場に行くことはあまりないけど、僕は忙しくても1回は行くようにしている。必ずスタジオに足を運んで、どういう空気でやっているのかを感じに行く。現場主義だよね。だから、サッカーだってアウェイにも行くし、K-1だったら会場にどんな形で自分の声が流れていくのかを聞きに行っている」
現場の雰囲気を感じ、誰が何を求めているのかを想像する。だからこそ、三村から放たれる声は会場を一体にするのだろう。