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フランスサッカー界のVAR評。
「この胡散臭い技術はどこからだ?」
text by
ジャンマリー・ラノエJean-Marie Lanoe
photograph byL'Equipe
posted2020/04/01 11:30
複数のカメラ、広い視野、スローモーション……あらゆる技術を持つはずなのにVARは問題を解決できていない。
「どう解釈するかはVARに頼るべきではない」
VARを改善していかねばならないのは明らかだが、奇跡的な解決策がないのであれば、これまでのように主審と審判アセッサー(審判を評価するスタッフ)の判断を尊重すべきであると多くは考えている。
3度のワールドカップ(1986年、1990年、1994年)に主審として参加したジョエル・キヌーがこの立場である。
「オフサイドとハンドのふたつのプレーが混乱を招いている。オフサイドの場合、今は疑わしい場面ではプレーを継続させ、VARが判定を下すまでに大きなタイムラグを生じることがしばしばある。微妙なケースでは、副審の判定を信頼すべきではないか。以前はそうした場合、副審は攻撃側の立場を尊重して判定を下していた。
ハンドに関しての多くは解釈の問題だ。そしてどう解釈するかはVARに頼るべきではない。何故ならそれはピッチ上の問題を画面上に移し替えたに過ぎず、論争を引き延ばしただけであるからだ」
この問題の移し替えこそは、VARによって引き起こされた欠陥のひとつである。判定のための中断時間は最短に縮めるべきだが、スローで鮮明な画像を再生できる状況では、ピッチ上の主観性について規則化することなど不可能であるからだ。
VARに完全依存してしまう審判の可能性も。
VARが審判の判定を覆し続ける現状では、審判への評価は下がるのみである。サイード・エンジミはその点に関して次のように述べる。
「私が今も現役の審判だったらば、《戦略的に》判定を下していくだろう。つまりビデオで確認するために、あらゆる場面で笛を吹く。すべてをビデオに委ねれば、誤審を犯す余地がなくなるのだから」
さらに彼はこう続ける。
「すべてを機械的におこなえば、100%完璧に仕事をこなせるはずだがそんなことは現実には不可能だ。どんなストライカーもシュートを100%決めることができないように。不確かな領域を残すべきだし、審判も人間であることを認めるべきだ。そうでないと限界に突き当たる」