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フランスサッカー界のVAR評。
「この胡散臭い技術はどこからだ?」 

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ジャンマリー・ラノエ

ジャンマリー・ラノエJean-Marie Lanoe

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posted2020/04/01 11:30

フランスサッカー界のVAR評。「この胡散臭い技術はどこからだ?」<Number Web> photograph by L'Equipe

複数のカメラ、広い視野、スローモーション……あらゆる技術を持つはずなのにVARは問題を解決できていない。

ゴールラインテクノロジーのような精度に達するのか?

 VARと審判の整合性を高めるためには、最善の判断と、観客を含めたすべての人々の最善の理解を一致させることのできるある種の憲章が必要であると、元審判で現在はスポーツメディア『RMCスポーツ』で解説者を務めるブルーノ・ドゥリアンは言う。

「オフサイドかどうかを急ぎすぎず、かといって3分半もかけずに判定することの間のバランスをとる必要がある。最終的な判断を下すのはピッチ上の審判だが、ビデオアシスタントレフリーはハンドとオフサイドに関して解釈の基準を作成すべきだろう。

 例えば恣意的ではないハンド――身体にボールが触れた後に腕に当たったような場合もPKが与えられるというのが合意事項となれば、サッカーはより画一的な方向へと進んでいく」

 オフサイドは副審の最大の懸案のひとつだが、エンジミもドゥリアンもVARに期待を寄せながらも過大な幻想は抱いてはいない。

「カメラの数を増やすことで、ゴールラインテクノロジーのような精度に達することもできるだろうが、実現に向けては様々な問題がある」とエンジミは語る。

 ドゥリアンはさらに突っ込んだ議論を展開する。

「10~15cmのグレイゾーンを設けるべきだとの主張があるように、たとえ確実ではなくともその範囲では副審の下した判定を覆さない。私が思うにVARは問題を置き換えているだけだ。つまり15cmまでなら、16cmならはどうするのか? ということだ。他方で判定を下される方も100%の確信があるわけではない。オフサイドはボールが蹴られる瞬間の位置で判断されるが、100分の1秒の違いをカメラはどう捉えるのか?」

 これらの議論から導き出されるのは、VARにばかり頼らず人間の判断にもっと信頼を置くべきであるという結論である。

「一番の解決策は廃止することだ!」

 キヌーは語る。

「過去においてリーグアンでひとつの節にどれだけ判定が問題になったか。せいぜい4つか5つだった。VARの介入は明らかな(誤審の)ケースだけに限るべきだ」

 エンジミも同意する。

「誰の目にも明らかでない場合には、レフリーの判定に委ねるのがいい。そうでないとこの問題から抜け出せなくなる」

 よりラディカルな意見に与するものもいる。ブルーノ・ドゥリアンがそうである。

「どうすればVARを進化させられるのか? 一番の解決策は廃止することだ!」

【次ページ】 「この胡散臭いテクノロジーはどこで生まれた?」

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