“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
田中亜土夢が再びフィンランドに。
サッカーと水墨画に魅せられる日々。
posted2020/03/25 20:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Atomu Tanaka
2020年冬、セレッソ大阪を退団した田中亜土夢はフィンランドにいた。
田中は生まれ故郷のクラブであるアルビレックス新潟で9年間プレーした後、2015年にフィンランド1部リーグの強豪・HJKヘルシンキへ移籍。3年間のプレーを経て、2018年にC大阪で日本復帰を果たしたが、2年の時を経て、再び“古巣”へ戻ることとなった。
この決断に驚いた人も多いだろう。筆者もその1人だ。なぜ彼は再びフィンランドの地へ戻ったのか。この移籍の裏側にある想いに迫ってみた。
「Jリーグに戻ってきて、遠慮していた自分に気づいた。セレッソでの2年間はもちろん自分の中で重要な日々でした。でも、いざ契約満了を告げられて、『やっぱりな』と思う一方で、フィンランドで出せていた自分が出せなかったことに疑問というか、もう一度スタートを切るには海外の方がいいのかと思うようになったんです」
田中にとってフィンランドで過ごした3年間は「新たな自分」を見つけた時間でもあった。
異国の地で知った自己主張の大切さ。
「僕はもともと『俺が、俺が』というタイプの選手ではないし、どちらかというと性格的にもプレースタイル的にも周りに合わせようとすることが多く、得点よりもアシスト、味方のサポートが役割でした。
でも、それがヘルシンキでは自分が点を取ったり、アシストという目に見える結果を出さないといけない役割になって、自分もその役割に対して応える価値を感じたというか、自己主張しなくちゃいけないと思うようになったんです。特に1年目は未知の世界ですし、言葉も全くわからなかったので、いい意味で開き直れたからこそ、『新たな自分』を受け入れられたんです」