フランス・フットボール通信BACK NUMBER
サッカーで世界は変えられる!
元豪代表選手が社会活動で戦う理由。
posted2020/03/26 11:30
text by
ジェレミー・ドクトゥールJeremy Docteur
photograph by
Fairfax Media
サッカー元バーレーン代表のハキーム・アルアライビが、2018年11月に亡命先のオーストラリアから新婚旅行に向かったバンコクで逮捕され、3カ月にわたり身柄を拘束された事件は、当時世界中に大きな衝撃を与えた。そのアルアライビ解放のために尽力したひとりがクレイグ・フォスターだった。
1969年、オーストラリアのニューサウスウェールズ州リスモアで生まれたフォスターは、元オーストラリア代表にして現在はテレビの人気解説者。同時に彼は“ミリタン(社会活動家)”としての人生も送っている。あらゆる問題の最前線に立ち、サッカーで得た名声が基本的人権の擁護やエコロジーなどの多くの闘争に役立つことを確信しながら、今日も戦い続けているのである。
『フランス・フットボール』誌1月21日発売号では、ジェレミー・ドクトゥール記者が、そんなフォスターの今の姿を紹介している。彼の生き方は、人としてどうあるべきかを考え、行動する契機をわれわれに与えてくれる。
監修:田村修一
オーストラリアにおけるサッカー界の改革を。
クレイグ・フォスターには複数の顔がある。オーストラリアの人々は“サッカールー(オーストラリア代表の愛称)”が1974年以来のワールドカップ本大会出場を決めた2005年のテレビ中継での、彼の感極まったコメントをよく覚えている。また彼がオーストラリア代表として1990年代に29試合に出場し、イングランドのポーツマスとクリスタルパレスでプレーしていたことも記憶に留めている。
そして現在、50歳になる彼は、さらにもうひとつ別の顔を持っている。それは“ミリタン(社会活動家)”として基本的人権を擁護し、高貴な目的達成のために働くアンバサダーとしての顔である。
彼がその活動を始めたのは最近のことではない。現役時代から選手組合(PFA=プロフェッショナル・フットボーラーズ・オーストラリア)の代表として、ヨーロッパのプロフェッショナリズムからは大きく立ち遅れたオーストラリアの状況改善のために尽力してきたのだった。
「PFAは90年代にひとつの世代を生み出した。20人を超える選手たちが、協会幹部たちが持ちえなかった長期的な戦略ビジョンを打ち立てたんだ。それが私の出発点だった」とフォスターは当時を回想する。