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“カテナッチョ”は死語にならない。
吉田と冨安がイタリアにいる価値。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2020/03/20 20:00
現地に倣うと「カテナチオ」でなく「カテナッチョ」。守備の国を象徴する言葉だ。写真は1990年W杯準決勝でマラドーナ(右)と対峙する主将ベルゴミ。
コンテが掲げた「カテナッチョ4.0」。
今シーズンから新監督アントニオ・コンテを迎えたインテルは、開幕から2度の1-0(“ウノ・ア・ゼロ”)を含む6連勝を飾った。
前線をFWルカクとFWラウタロ・マルティネスのカウンターに任せて、後方には3人のCBと2人のSB、5人の本職DFを置く。闘将コンテはEURO2016に臨んだイタリア代表監督時代に「チームを勝たせるためなら恥も外聞もなく守りを固める。カテナッチョを命ずる」と発言したことがある。有力紙『メッサッジェーロ』は、インテルの進化した堅守を現代風に「カテナッチョ4.0」と名づけた。
そのインテルも今年2月のコッパイタリア準決勝で、指揮官ジェンナーロ・ガットゥーゾ率いるナポリに1-0で敗れた。闘将ガットゥーゾは4-1-4-1で中盤を封じ込め、相手2トップをボールに一切触れさせない戦法で勝ちをつかんだ。
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ガットゥーゾもまた、ドイツW杯で21世紀のカテナッチョを見せつけたアッズーリの1人だ。闘将は、その試合にDFもMFもなくチーム全体で90分間守るという決意を注入したのだ。
2020年の今、イタリアにおける“カテナッチョ”とはもはや戦術ではなく、ゲームに臨む心構えを指す言葉となった。
一度かけた閂は何があろうと守り抜く。
守備の国のカタルシスは、世界中のDFたちにとっても共感できるはずだ。
“カテナッチョ”は、決して死語にはならない。