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なでしこ、イニエスタ、スーケル。
困難の先にスポーツの日常はある。

posted2020/03/19 11:40

 
なでしこ、イニエスタ、スーケル。困難の先にスポーツの日常はある。<Number Web> photograph by Getty Images

2011年、東日本大震災から数カ月後のW杯制覇。当時の日本を文字通り明るく照らしたのは、なでしこジャパンだった。

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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 ウイルスという見えない脅威によって、スポーツ界から「日常」が奪われてしまった。

 Jリーグやラグビーのトップリーグに続いてプロ野球の開幕も延期となり、大相撲やBリーグなどは無観客(その後Bリーグは中止に)。さらに、プロだけではなくアマチュアスポーツ界も感染拡大を防ぐために足並みを揃え、歴史ある春の選抜高校野球は中止となった。

 甲子園のグラウンドに立つ夢を奪われた高校球児の無念は計り知れないが、彼らに限らず、春の大会に向けて日々汗を流していたその他競技の部活生たちも、きっとぶつけようのない悔しさを抱えているに違いない。

 スポーツが「日常」から消えてしまうのは、あの東日本大震災の時以来だ。

 サッカー専門誌の編集部に籍を置いていた当時、誌面作りにずいぶんと頭を悩ませたことを思い出す。福島第一原発の爆発事故が映し出されるテレビ画面に呆然としながら、はたしてこの状況でもスポーツ雑誌を作るべきなのかと自問自答したものだ。

9年前と異なる、世界中での危機。

 ただ9年前と異なるのは、それが日本国内だけの問題ではないということだろう。サッカーに限って言えば、東日本大震災後にはヨーロッパをはじめ世界中のリーグや選手から、日本の復興を願う励ましのメッセージが届いたが、今回はヨーロッパのサッカー界も甚大なダメージを受けている。

 いまや世界中のスポーツが、望まざる停滞を余儀なくされている。

 この脅威が、いつ、どのような形で終息を迎えるのか。門外漢にはまったく想像がつかないが、ただひとつ言えるのは、スポーツは、スポーツによってもたらされる希望や感動は、いかなる危機的状況に直面しても、決して消え失せはしないということだ。

 9年前、復興支援チャリティーマッチでのカズのゴールに、内田篤人のアンダーシャツに書かれたメッセージに、そして震災から約4カ月後に世界制覇を成し遂げたなでしこジャパンの快挙に、どれだけの人が心を打たれ、勇気づけられただろう。

【次ページ】 今宮純さんが絞り出した言葉。

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