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コロナで延期&中止、賞金はゼロ。
世界を旅するテニス選手に大打撃。 

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内田暁

内田暁Akatsuki Uchida

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photograph byGetty Images

posted2020/03/13 20:00

コロナで延期&中止、賞金はゼロ。世界を旅するテニス選手に大打撃。<Number Web> photograph by Getty Images

BNPパリバオープンだけでなく、今後6週間のATPツアーが中止に。新型コロナ禍はテニス界全体にも大きな影響を及ぼしている。

「宙ぶらりん」状態の不安。

 噂に信憑性を覚える根拠は、ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)が、緊急理事会を開いたことにあった。このタイミングで協議することと言えば、大会開催の是非についてしかありえない。だから彼の中では、延期の可能性は十分にありえるものだった。

 それでも日比野もダニエルにも、この時点では、日本に帰るという選択肢はなかったという。日比野は翌週にメキシコ、ダニエルはアリゾナ州で開催される大会に、それぞれ出場予定でいたからだ。何より2週間後には、BNPパリバオープンと並ぶ巨大な大会、マイアミ・オープンが控えている。

 ただBNPパリバオープンが延期になったことにより、マイアミも同様の決断を下すことは十分に考えられた。とは言え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い刻一刻と情勢が変化し、日本から他国への渡航が規制される可能性もある中、帰国するのはリスクが伴う。

 皆がみな、行く先や次の試合の目処も立たぬ「宙ぶらりん」状態のまま、不安とやるせなさを抱えていた。

時間、渡航費などアジア勢のハンデ。

 テニスの世界で、ATPやWTAの大会群が“ツアー”と呼ばれているのは言いえて妙で、テニス選手たちは正に、旅を日常として生きている。

 3月のこの時期は、前述した2大大会が開催される北中米が、多くのトップ選手たちの旅の目的地。その後テニスの主戦場は、5月末からの全仏オープンを経て、英国ウインブルドンを終着点とする欧州へと移っていく。

 さらにその間に日本も含め、中国やオーストラリアなどの世界各地で、ITF(国際テニス連盟)主催の下部大会が毎週のように開催される。だからテニス選手たちが、1つの町に2週間以上とどまるのは極めて稀。また、1~2カ月を目処に旅のスケジュールを組むものの、試合結果に応じ予定は変化するのが常だ。

 選手の多くは、旅のはじめに変更可能な航空券を購入し、試合に負ければ次の町に向かう飛行機を探しつつ、宿泊先を予約する。その生活はどの選手にも厳しくはあるが、ツアーの中心地である北米や欧州から遠いアジアの選手たちは、移動時間や渡航費などの面でも、ハンデを背負っていると言えるだろう。

【次ページ】 手にできるはずの賞金もなくなり。

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