松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
日本代表の高田千明と大森盛一コーチ。
東京パラで叶えたいことを修造に語る。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/03/16 07:00
ひとりの夢が多くの他の人の夢や未来につながる……高田千明が目指す夢は周りを幸せにしているようだ。
「思ったことは口に出して言ってみる」
松岡「大森さんも千明さんと一緒に夢を追体験しているような感覚があるんですか」
大森「そうですね。オリンピックにせよパラリンピックにせよ、アスリートが目指す舞台はそこじゃないですか。僕はいったん現役を引退して離れたわけですけど、コーチとして戻ってきたときにまたそこを目指している。それがとても不思議な感覚なんです。そして今度は、東京でそれが行われる。昨年、ドバイでギリギリ4位に入って出場を決めたときは、ホッとしたと同時に、使命感にも駆られました」
松岡「使命感というのは、東京でより良いパフォーマンスをしなければならないという思いですね。けっこう色んな事件があってここまで来ましたけど、その度にチャレンジして、自分らしい生き方を千明さんは貫いてきた。生きていく上で何が一番大事なことだと、千明さんは感じてますか」
高田「うーん、人生は1度きりじゃないですか。一本のラインで、巻き戻しもできない。だから後悔だけはしたくないと思っていて、自分がやりたいと思ったら自分から動くようにはしています。それと、思ったことは口に出して言ってみる。あれがしたい、これがしたいと言っていると、それを聞いた人が手伝ってくれたり、こっちだよって導いてくれるかもしれない。輪が広がって、自分のできることも増えていくので、口に出して行動することが大切だと思いますね」
「障がいは個性だ」という認識を。
松岡「実際に、千明さんはどんどん常識を破ってきているんですよ。ご両親が無理と言うこととか、走り幅跳びへの転向とか、みんなが常識として無理だろうというところを自ら動いて切り拓いてきた。それは単純に自分がやりたかったからですか」
高田「ただただ自分がやりたいことをやってきただけです。私、人生の死ぬ瞬間まで笑っていたいんですよ。自分の意思ではなく、人に流されてやってきて、ちょっとでも納得できないぞと思ったら笑えないじゃないですか」
松岡「大森さんも千明さんをサポートしている反面、千明さんから学んだこともたくさんあるんじゃないですか。千明さんと出会えたからこそ、気づけたこととか」
大森「気づかされることはよくあるんですけど、この人はわりとレアケースだと思うんですよ。最初に聞いてびっくりしたのは、『私には障がいがあるから、パラリンピックを目指せるんです』と言ったこと。障がいってマイナスなイメージですけど、こういう風にプラスに捉えることもできるんだなって。障がいは私の個性とも言うんですけど、まさにその通りですね。今、パラスポーツにも関心が高まって、障がい者にも光が当たる中、千明さんみたいな人が先頭に立って、みんなを引っ張っていってほしいなと思います」
松岡「僕もこの企画を通してたくさんのパラアスリートにお会いしてきましたけど、皆さん共通して『障がいは個性だ』と言いますね。
いよいよ東京大会がやってきます。そこで何を感じられるか。何を伝えられるか。最後に、それぞれの思いを聞かせていただけますか」