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小笠原満男&ジーコの育成論・前編。
「オガサは頭で何点取った?」
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byToru Hiraiwa
posted2020/03/13 11:30
ブラジル視察で感じたことを、クラブのレジェンドであるジーコ(右)に問いかけた小笠原。育成年代の指導に必要なことを再認識した。
ブラジルの下部組織に足りないもの。
ジーコ その小さなコツというのを、プロを経験した元プロの選手たちは持っているわけで、それを子どもたちにきちんと教え込まなくちゃいけない。
たとえば、シュートの際に、どういう踏み込み方をするのか。こういう状況では、どういう蹴り方ができるのか。そういった細かい部分は、やっぱり元選手にしか分からない感覚的なもので、そこがブラジルの下部組織には足りないところかなと思っている。
最近のブラジルで流行っているのは、パスサッカー。あるスペースだけで練習しているということが多くなってしまっているんだ。まずは個をちゃんとレベルアップして、チームのためにその力を発揮できるような練習をしなくちゃいけないのに。
小笠原 ブラジルでもそういう傾向があるんですね。
ジーコ 最近の指導者は、“選手はどのポジションもこなせないといけない”と考える傾向がある。僕はそれについて非常に残念に思っていて。それぞれに体格的な生まれつきの特性があるわけで、本来それを生かしてあげなくてはいけない。
また、サッカーセンスのところでも、視野が広い人、狭い人がいる、技術が高い人、高くない人がいる。そういった特長を引き出してあげるということが、非常に重要だと思う。
小笠原 日本人はアレができない、コレができないと言って、選手の良い部分にフォーカスしない傾向も感じます。
ポジションによって必要な能力が違う。
ジーコ たとえば、メンバー外だけでの練習になったとき、人数が少ないなかだと、選手をローテーションで回した練習をすることが多い。クロスの練習であれば、センターバックがクロスを上げる場面があったりする。正直、センターバックが試合中にクロスを上げる場面ってあるのか。ないでしょう。
センターバックが試合で必要な武器は何かというと、クリア、ジャンプ、ヘディング、スピード。サイドバックは、カバーリングをする、前に行く、戻る、クロスを上げる。クロスを上げる際は、どこを見るか、見ながらその技術を出せるのか。キック1つにしても、浮き球のボール、速いボールの蹴り方を磨かなきゃいけない。
FWはシュートはもちろん、ボールを引き出す動き出し、キープする能力、体の使い方、反転のタイミング。サイドハーフも、行ったり来たりしなくちゃいけないなかでの攻守におけるポジショニング、バランス、引き出し方、タイミングといった部分が必要になってくる。それぞれのポジションに必要な能力があるんだ。
オガサは現役時代にヘディングで何点取った?