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小笠原満男&ジーコの育成論・前編。
「オガサは頭で何点取った?」
posted2020/03/13 11:30
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph by
Toru Hiraiwa
今季からテクニカルアドバイザーになった小笠原と、テクニカルディレクターを務めるジーコが、今後の育成について「鹿島アントラーズイヤーブック2020」で語った。ここでは、その未公開部分を特別公開する。
小笠原 2019年9月に、ジーコが作った大会「第22回日伯友好カップ」に同行してきました。大会後、少しブラジルに残って5つのクラブを視察して、10歳からトップまでの各カテゴリーを見てきたんですが、そのときに感じたのが、個のトレーニングがすごく多かったことです。
日本ではポゼッションやボール回しの練習に時間を割くことが多いと感じています。選手を育成していくという視点で見たときに、ジーコさんは個のトレーニングについてどう考えていますか。
ジーコ やはり個を成長させることによって、チームが成長すると考えるのが当たり前のことではないかと思う。それぞれの選手に良さがあって、特長があるわけで。そのなかで足りないところを補っていくのは、当然やらなければいけないこと。特にサッカーの基礎のところだね。ボールコントロール、ドリブル、パス、ヘディング、シュート、センタリングという部分が、まずきちんとできていれば、何の問題もなくプレーできる。
そこにプラスして、持って生まれたパワーや瞬発力だったり、個人的な特性が含まれていくことで、プロとして勝負できるんだ。ただ、それも基礎があってこそできることだけどね。
止める・蹴るができてからパス回し。
小笠原 育成年代で止めて・蹴ることができないのに、ボール回しの練習を多くしているのは、個人的には違うなと思っていて。まずは基本的な止める・蹴るができるように育成していく。それができるようになって初めて、パス回しやポゼッションのトレーニングが成立する。
そもそも、止めて蹴れないのにポゼッショントレーニングではボールを多くもらうことができないし、もっと言えば、止めて蹴れない選手は怖がってボールを受けたがらない傾向がある。それでは選手は成長しないし、プロになんてなれるわけがない。
ジーコ その通りだと思うよ。ブラジルの場合は問題が1つあって、下部組織で教えている監督・コーチが、体育学を勉強してきた先生であるということ。体育学の先生は、体育に関しては詳しいけれど、サッカーのノウハウはアバウト。
たとえば、さっき言った6つの基礎技術があることは知っているけれど、ボールコントロールをするときに力を抜いてやるとか、胸でコントロールするために、どういうコツがあるかとかを知らない。子どもたちからしたら、ただ「コントロールしろ」と言われても、なかなかうまくはいかないものだよね。
小笠原 間違いなくそうですね。