酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
神宮はナゴヤドームの3倍HRが出る?
球場の人間臭さを思い知る無観客。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/03/07 20:00
無観客で行われた中日vs.広島のオープン戦から。全景を見てみると、ナゴヤドームの広さに改めて気づかされる。
野球は昭和から大きく変わった。
こうした数字を並べてみて実感するのは、「野球は昭和の時代から思い切り変わった」ということだ。
打者はより遠くへ飛ばさないとスタンドインできなくなったし、外野手はさらなる俊足と強肩を求められるようになった。そして打者のパワーアップによって、投手は剛速球と急激に落ちる変化球を武器とするようになった。
よくキャンプ地で昭和の名選手だった解説者がバッティングケージにもたれかかって、フルスイングをする柳田悠岐ら現代のスラッガーに「そんなに振り回さなくても、しっかりボールを捉えれば飛ぶんだよ」とアドバイスをしていたりするが、これは30数年間の「野球の大変化」を理解していないからだろう。
今のプロ野球は、昭和のプロ野球とはスケール感が大きく違うのだ。
球場の形が違う人間臭さが魅力だ。
「競技場の大きさがスタジアムによって違うなんて、野球だけだよ。サッカーだって、ラグビーだって、バスケットボールだってそんなこと考えられない。だから野球はいい加減なんだ」
そんな声もある。
しかし私はそういうところも含めて野球だと思っている。
MLBでもボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイパークは左翼は94.5mしかないが、その代わりに11.3mもの巨大なフェンス「グリーンモンスター」がそびえている。
旧ヤンキースタジアムは、創建当初、左中間は152.4mもあったが右中間は130.8mだった。これは左打者のベーブ・ルースに本塁打を量産させるためだったと言われている。
さすがに今はそうしたバイアスは小さくなっているが、そういう人間臭さも野球の個性であり、魅力だったのだ。
人がいない野球場の映像を眺めながら、この個性あふれる球場にふたたび人が戻ってくることを想像している。
だからこそ、今年の「球春」はひとしお待ち遠しいのだ。