酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
神宮はナゴヤドームの3倍HRが出る?
球場の人間臭さを思い知る無観客。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/03/07 20:00
無観客で行われた中日vs.広島のオープン戦から。全景を見てみると、ナゴヤドームの広さに改めて気づかされる。
ロッテはホームランラグーンで……。
そして数字をよく見ると、本塁打の頻度は両翼や中堅ではなく、左右中間の距離やフェンスの高さによって大きく違っていることがわかる。
昨年、ZOZOマリンスタジアムは「ホームランラグーン」を新設し、左右中間の膨らみをなくした。これによってHR/Gは1.25から2.09に急増した。球場の投打の傾向は人為的に変えることが可能なのだ。
公認野球規則2.01「競技場の設定」には、1958年6月1日以降にプロ野球球団が新設する球場は、両翼325フィート(99.058メートル)、センター400フィート(121.918メートル)以上なければならない、と書かれている。
この規則は、永らく有名無実化していた。
昭和の頃の本拠地球場のスタンダードサイズは「両翼90m、中堅115m、左右中間110m」だった。ONや野村克也はこの狭い球場で本塁打を量産していた。
だから1978年に両翼94mの横浜スタジアムが誕生し、大洋ホエールズが本拠地にしたときには「こんなに広い球場でホームランなんて出るのか?」と思ったものだ。
さらに1988年に、ようやく公認野球規則に則って両翼100m中堅122mの東京ドームができたが、当時の野球雑誌には「巨人だけが本塁打が激減するのではないか?」と言う記事が載っていた。
東京D、横浜、神宮は立地的な制約も。
事実、大洋や巨人も一時的には本塁打数が減少したが、それ以降、公認野球規則に則った本拠地球場が次々と開場、さらに既存球場も改修が進んだ。そして今では両翼100m、中堅120mがスタンダードになっている。
そんな経緯もあって、横浜スタジアムはNPB本拠地として最小クラスの球場になった。また東京ドームは、左右中間のふくらみがなくて、そろばん玉のような形状だ。できた当初は気にならなかったが、今見るとかなり異様だ。今では神宮球場に次いでホームランが出やすい球場になっている。
神宮球場も含めこれら3球場は都心の真ん中にあり、敷地に限界があるから球場の拡張は難しい。フェンスを高くするなど工夫はしているが、それにも限界があるということだ。