“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
川崎・登里享平に再び聞いてみた。
「もう、マンネリはないですか?」
posted2020/03/04 19:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
プロサッカー選手の覚悟――。それは多岐に渡る。
アマチュアからプロになる覚悟、出場機会を求めて移籍する覚悟、ワンランク上の場所に飛び込む覚悟……。さまざまな形で語られることはあるが、表面的にわかりにくいのは「残る覚悟」である。
川崎フロンターレDF登里享平はまさに今季、この覚悟を決めた選手の1人だ。
「1回ゼロに(リセット)しよう、と思ったことはありました。その気持ちは一昨年に芽生えて、シーズンが終わった後にピークに達しました。それで昨シーズンはその気持ちを持って、“背水の陣”で挑んでいました」
川崎10年目を迎えた2018年シーズン。
気持ちが芽生えた一昨年とは、2018年シーズン。登里は2009年に香川西高(現・四国学院大学香川西)から川崎に加入し、そこから川崎一筋10年目のシーズンを迎えていた。
「この時、周りから『こいつ、いつまで経っても変わらへんやん』と思われてしまっているのではないか、サッカー選手として伸びしろがあると感じられていないんじゃないかというネガティブなことを考えていました。
それまでピッチ外では盛り上げ役など、自分のキャラクターも認知されてきて、正直、『無理に頑張らない自分の方が、ここに長くおれるんかな』と思った時もありました。試合に出ていようが出ていまいが、この立ち位置でおれるんやったら、ずっと長くここにおれるんかなという甘えがどこかに芽生えてしまっていたんです。
でも、2017年にリーグ初優勝、翌年に2連覇を達成するうちに徐々に考えに変化が生まれてきたんです。『俺は何をしているんやろか……』と思うようになったんです」
プロ入りして3年目以降、どのシーズンも「準レギュラー」的な立ち位置。その過程で左サイドバック、ウィングバックとして進化し続けたからこそ、王者・川崎からずっと必要とされていた。
しかし、心の内では葛藤があった。