“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
川崎・登里享平に再び聞いてみた。
「もう、マンネリはないですか?」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/03/04 19:00
Jリーグ開幕戦、左サイドで存在感を示した登里。あらゆるアタッカーの特徴を生かすプレーに注目したい。
勝手にマンネリ化させていた。
彼は勝負をかけた1年間で、大きな自信を得ると同時に、手にした教訓もあったと話す。
「自分の中で『目の色を変える』ということがどういうことかを学んだ1年でもありました。環境のせいではなくて、自分の考え方を変えるだけでどんな環境にいても奮い立たせることができるんだと気づいたんです」
「これで最後」という不退転の覚悟を持ってシーズンを戦った結果、彼の目の前に広がったのは「ここでいいんだ、これでいいんだ」という明確な回答だった。
隣の芝が青く見えた。勝手に自分をマンネリ化させていた。決断やチャレンジは何も環境を変えることだけが選択肢ではない。刺激を外的要因ばかりに求めてしまう場合もある。その思い込みは、彼の心までも奪いつつあった。
だが、昨季の1年間で「刺激は自分の内側からも起こせる」ということに気づくことができたのだった。
オフには契約更新の話が届いた。すると登里は迷うことなくオファーを快諾する。
契約を更新、競争は続く。
「残留一択でした。今回の更新は今までの中で一番覚悟を固めた決断かも知れない。側から見れば、これまでの決断と変わらないように見えると思いますが、このオファーは正真正銘に僕が勝ち取ったものだと思っているんです。昨年、クラブとピッチにおける自分の立ち位置だったり、考えがクリアになって、それがパフォーマンスに結びついたことに対する最大の評価だと受け止めているんです。
逆に言えば、今季も相応の活躍ができなければ、『期待はずれ』に終わってしまう。大卒の即戦力選手が入ったり、実績もある選手が加入するなど、相変わらずフロンターレのチーム内競争はどこよりも厳しい。だからこそ、自分の武器で存在を証明していく。こんな刺激的なことはありませんよ」