ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ドルトムント戦完敗も宿っていた、
長谷部誠と鎌田大地、目の奥の炎。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/02/25 08:00
欧州サッカーでいま最も見たい選手、ハーランド(右)。サンチョらとのユニットは恐ろしい破壊力を秘めている。
カウンター自慢のドルトムント。
攻撃面で頼みの綱は左サイドの“槍”、フィリップ・コスティッチの前への推進力しかありません。4バックになったことで守備負担を軽減されたコスティッチがアタックに専念できる素地を得たのは事実で、アイントラハトは鎌田いわく「カウンターで活路を見出す」スタイルへの転換でチーム成績を浮上させてきました。
しかし、今回は相手との相性が悪すぎました。ドルトムントは、アイントラハト以上にカウンター能力に優れる選手たちがいます。
電光石火のシュートでアイントラハトを打ち破ったルカシュ・ピシュチェクのクイックアクション、イングランドの至宝ジェイドン・サンチョの正確無比な右足アウトサイドでのボールタッチからのフィニッシュ。
そして“リアル怪物くん”ことアーリング・ハーランドの「ホントに19歳?」と感嘆してしまうポジショニングからのシュートモーション、そしてラファエウ・ゲレイロの強烈なレフトショットと、もう私、お腹いっぱいです……。
「戦う姿勢を見せられなかった」
試合後のミックスゾーン。日本人の両選手は、たとえピッチに立てなくても取材対応してくれます。チームが大敗し、自らも出場機会が得られなかったのですから忸怩たる思いを抱いているはずです。それでも長谷部は、しっかりとチームの状況と自身のことを話してくれました。
「今日は0-4の大敗、僕らはピッチで勇気や戦う姿勢を見せられなかった。僕自身は最近途中出場なども多くて難しさを感じていますけども、その限られた時間でも自分の良さを出していかないといけないですよね」
この日のように圧倒的守勢に回ったときこそ、長谷部のような経験豊富な選手の知見が大事になると思うのですが。危機に陥ったとき、如何に振る舞いチームを生き返らせるか。調子が良いときには見え難いゲームコントロールの機微を、長谷部なら見せられるはずと思っています。
一方、同じく出場機会のなかった鎌田はこんな私見を述べていました。
「ここまで急に試合に絡めないとは考えていなかったので、正直理解し難い状況ですけど、最近チームは勝っていましたからね。その意味では、サッカーの世界って流れが早いなと感じます。でも、どこかで必ずチャンスは来ると思いますから」
そう、その通り! コスティッチ一辺倒になりがちな現況の攻撃を再活性化させられるのは貴方しかいません!(その後、ELザルツブルク戦で鎌田は見事ハットトリックを達成しました)
長谷部、鎌田のふたりの目の奥に熱い炎が宿っていることを確認して、少しだけ気を持ち直してフランクフルトへ戻りました。
早速行きつけのバーに行くと、馴染みの女性店主が手を振って迎え入れてくれます。
寒風吹きすさぶドイツで日本人フットボーラーたちが懸命に戦っています。そして僕も、この街に住む人々の真心に触れながら、日々を生きています。