ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ドルトムント戦完敗も宿っていた、
長谷部誠と鎌田大地、目の奥の炎。
posted2020/02/25 08:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
先日、一時帰国していた日本からフランクフルトへ戻り自宅のドアを開けると、何だか違和感が……。
3週間くらい留守にするので掃除はしていったはずですが、それにしても家の中が整然としている。不思議に思って床に目を落とすと、ドイツ語で書かれたメモが。この筆跡は間違いなく大家さんのもの。目を凝らして判読すると、こんな文言が書かれていました。
「大変だったのよ! キッチンの窓のレバーをちゃんと降ろしていかなかったでしょ! 嵐で窓が開いて雨風が吹き込んできて、キッチンの床が水浸しになったんだから。仕方がないからアンタの部屋に入らせてもらって綺麗に掃除しといたわ。
そうそう、キッチンのドアも壊れてたから直しといたわよ。今度からちゃんとレバーを締めてから外出してよね。そんじゃあね!」
そんな大変なことになってたんですか!
調べると、2月9日から11日にかけて、ヨーロッパ北部各地でここ数年で最大級の暴風雨『キアラ』が吹き荒れたのだとか。フランクフルトでも大聖堂近くで建設用のクレーンが倒れるなど、凄まじい被害があったらしく、その嵐の影響でしっかり施錠していなかった僕の家の窓が全開になってしまったんですね。
結果、窓枠沿いの棚に置いてあったお気に入りの食器が粉々に割れてしまったのですが、それも自業自得……。大家さんの心遣いに感謝しつつも、大事なお皿を失ったショックに打ちひしがれながら、ドイツに戻った日のナイターゲームを取材するためドルトムントへ向かいました。
フランクフルト発の指定席で……。
当日はフライデーナイト。ドイツの方々は金曜の昼くらいからホリデー気分を醸すのが仕様で、フランクフルト中央駅には各地へと向かう旅行客が押し寄せていました。
ドイツ鉄道特急のICEに乗り込んで予め購入した指定座席へ向かうと、見知らぬ若者が2席分を陣取ってどっかりと寛いでいます。ドイツ鉄道は事前に席を予約できるのですが、席が空いていれば誰でも自由に座れます。若者も僕が来るとは思っておらずに余裕しゃくしゃくのご様子。
でも彼は状況をしっかりわきまえていて、僕が「ごめんよ?。その席は僕が予約してるのよ」と言うと、「おお、そうかい。合点承知!」とばかりに素早く席を移ってくれました。