ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ドルトムント戦完敗も宿っていた、
長谷部誠と鎌田大地、目の奥の炎。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/02/25 08:00
欧州サッカーでいま最も見たい選手、ハーランド(右)。サンチョらとのユニットは恐ろしい破壊力を秘めている。
ドルトはあの関西球団と同じ匂い?
曇天が広がる車窓を眺めながら、在りし日のお皿に思いを馳せること約2時間30分。ルール地方の工業都市、ドルトムントに到着しました。
ドルトムントの人口は約58万人。ちなみにドイツの首都ベルリンは約375万人で、僕の住む国内第5の都市フランクフルトは人口約75万人です。ドルトムントは鉄と石炭の街として栄えましたが、現在は製鉄所や炭坑が閉鎖したことで、ハイテクノロジーな産業構築へと移行しながら街の再建を進めています。
そんな中規模の街に、ヨーロッパで年間最多観客動員数を誇るボルシア・ドルトムントの本拠地ジグナル・イドゥナ・パルクがあります。
僕の年代のサッカーファンはネーミングライツされた現在の名前より、州の名前を由縁にしたベストファーレン・シュタディオンの方がしっくりときます。ちなみに、地元の人々もベストファーレンと呼びますが、それは近隣にベストファーレン・パークという市民憩いの公園があることにも関連しています。
ドルトムント中央駅から地下鉄Uバーンに乗り込むと、タイガージャージの一団に取り囲まれました。ドイツ各地のアウェーゲームにも大挙馳せ参じ、8万1365人収容のホームスタジアムを立錐の余地なく埋める熱狂的なドルトムントサポーターに遭遇すると、僕はいつも同じような柄を纏う関西球団のファンと同じ匂いを感じてしまいます。
“虎模様”って、人間の感情を喚起する何かがあるんでしょうかね。
3度の極寒でビールを飲み干すサポ。
今日のカードは、ドルトムントvs.アイントラハト・フランクフルト。スタジアム脇のクナイペ(ドイツ風居酒屋)は室外のテラスも含めて試合開始2時間前から満員で、気温3度前後の極寒の中、両サポーターが大ジョッキで地元名産のビール『ドルトムンダー』を飲み干しています。僕も飲みたいけど、取材前だからガマン、ガマン。
初めてこのスタジアムのコンコースからスタンドに入ったときの感情は、今でも覚えています。まだユルゲン・クロップ監督(現・リバプール監督)が就任1年目で、香川真司も在籍していなかった2008-2009シーズンのルールダービーでした。
メインスタンドから観て右側の小さな一角に青いシャルケサポーターが押し込まれる中、まるで絶壁のような急角度のスタンドを埋め尽くした黄色いドルトムントサポーターが、こぼれ落ちちゃうんじゃないかってくらいに飛び跳ねてぐわんぐわんと波打っていたあの光景を、僕は生涯忘れることはないでしょう。