競馬PRESSBACK NUMBER
福永祐一と藤原師が惚れ込む才能。
ミヤマザクラ、1600mの壁に挑む。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/02/21 17:30
初めてコンビを組んだ福永祐一は、24年連続のJRA重賞勝利となった。
「粘り込む形は正直、不本意」
レース後にそう語る表情は、優勝騎手とは思えないほどシリアスなそれだった。眉間にしわが寄った理由が、もちろんあった。
「今回は初めてのマイル戦でした。次の(同距離で行われる)桜花賞を見据えて、ある程度タメを利かせる競馬をしなくてはいけないと考えていました。タメた上でどのくらいの脚を使えるか、みておきたかったのです」
確かに実際の競馬はそれとは違う形になってしまった。福永騎手自身、元々スタートの上手なジョッキーという事もあり、この日の東京のマイル戦で、ミヤマザクラは好スタートを決めた。すると序盤は3番手、3コーナー手前では我慢し切れないという感じで2番手に上がり、最後もラスト200メートルでは早くも先頭に立った。パートナーは言う。
「粘り込む形になってしまったのは正直、不本意です」
“勝って兜の緒を締めよ”という姿勢の言葉であるが、実際、ミヤマザクラにとってはこの1600メートルという距離が、今後もカギとなりそうなのだ。
母ミスパスカリの仔は長距離向き。
デビュー戦は1800メートル戦だった。その後の2戦はいずれも2000メートルで、先述した通りレコード勝ちと牡馬戦線の有力馬を相手に善戦の2着。父はスピードに優るディープインパクトだが、母ミスパスカリの産駒はある程度、長い距離が必要な仔が多い。
全兄のボスジラは2400メートルや2600メートルで勝ち鞍がある。同じく全兄のポポカテペトルも2400メートル戦を得意な舞台として、3000メートルの菊花賞でも3着に好走してみせた。
これまた全兄のマウントロブソンは先述の2頭よりは短い距離で活躍したが、それでも全5勝の内訳は1800メートルで2勝、2000メートルで3勝。それより短い距離のレースには走った事すらなかったのだ。
さらにもう1頭、全兄のハワイアンソルトはダートを主戦場に走った馬だったが、やはり得意としていたのは長距離戦。小倉競馬場のダート2400メートルを逃げ切って勝った事もある馬だった。