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Jクラブは開幕前、何を鍛えている?
レノファ山口のキャンプ潜入・前編。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byNorio Rokukawa

posted2020/02/13 20:00

Jクラブは開幕前、何を鍛えている?レノファ山口のキャンプ潜入・前編。<Number Web> photograph by Norio Rokukawa

ミーティング中、熱心な表情で選手にコンセプトを説く霜田正浩監督。キャンプでしか見られない貴重なものだ。

「昇格から逆算してチーム作りを」

 リーズスピリッツやBマインドについて霜田監督がキャンプの最初に強調したのには、理由があった。

 霜田監督が山口の指揮を執ることになったのは2018年シーズンだった。

 就任1年目は、攻撃にフォーカスして快進撃を見せた。終盤に失速してしまったが、8位でフィニッシュ。前年が20位だったことを考えれば、大躍進だった。

 ところが、攻撃的なスタイルをさらに磨いてJ1昇格を狙った昨季は守備が崩壊し、15位に沈んでしまった。

「あれだけ失点数が多くなってしまったのは、選手だけのせいじゃない。守備の構築もしたかったんだけど、レノファの良さ、攻撃面の良さが消えるリスクもあって躊躇した。それは僕の甘さ。守備と攻撃のバランスを取ることは自分の引き出しにあるし、今年は昇格から逆算してチームを作りたい。勝負の3年目なので、いろんな引き出しを全部開けるつもりです」

 今季の目標はJ1昇格。理想は自動昇格のトップ2、最低でもプレーオフ進出の6位以内を狙っている。だが、チーム編成における難しさにも直面している。

 主力選手の引き抜き、である。

個人昇格と、今いる選手を伸ばす術。

 就任1年目の夏に小野瀬康介がガンバ大阪に引き抜かれ、そのオフにはオナイウ阿道が大分トリニータへと旅立った(現在は横浜F・マリノス)。2年目の夏には高木大輔までもがG大阪へと移籍した。

 さらに今オフ、期限付き移籍だった佐々木匠と宮代大聖がそれぞれベガルタ仙台、川崎フロンターレに復帰しただけでなく、菊池流帆(ヴィッセル神戸)、前貴之(横浜FM)、三幸秀稔(湘南ベルマーレ)がJ1クラブにステップアップしていったのだ。

「個人昇格は大歓迎。うちが評価されたっていうことだからね。ただ、本音を言えばチーム編成的には厳しいよ。特に、三幸や前は僕のサッカーを最も理解していた選手たちだから。それだけじゃなく、我慢して育てていた流帆、一人前になってきた(山下)敬大(ジェフ千葉)もいなくなった。だからこそ、今年はこれまで以上に、今いる選手たちをどうやって伸ばすか、伸びた選手たちをどうやってチームの力にするか、さらにチーム強化にプラスαをどう引き出すか考えているんです」

 昨季、J2で15位に終わり、予算も限られたチームがJ1昇格を狙うには、1人ひとりが頑張るだけでなく、集団のパワーを出さなければならない。1+1が3にも4にもなってチーム力を高めていくサッカー――。そのためのキーワードが「Bマインド」であり、「リーズスピリッツ」なのだ。

【次ページ】 オフにセビージャの非公開練習を視察。

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