Jをめぐる冒険BACK NUMBER
Jクラブは開幕前、何を鍛えている?
レノファ山口のキャンプ潜入・前編。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byNorio Rokukawa
posted2020/02/13 20:00
ミーティング中、熱心な表情で選手にコンセプトを説く霜田正浩監督。キャンプでしか見られない貴重なものだ。
世界のスタンダードと同じラインに。
理想は、世界のスタンダードと山口のスタンダードが――個々のレベル差は大きく開いていても――同じラインにあって、しっかり繋がっているということ。
「ヤン(高宇洋)や(川井)歩、(森)晃太や(田中)陸とか、これからっていう選手に、J2仕様のサッカーをやらせたり、外国人ストライカー頼みのサッカーをやらせても、誰も魅力を感じないし、成長できないからね。さっそく今も、レバークーゼンと俺らがやっていることは変わらないんだぞ、って選手たちには伝えています」
戦術ボードには「ワイドレーン」「ハーフレーン」「センターレーン」からなる5つのレーンを描き、それぞれの立ち位置を意識させている。
「ハーフエンド」「ハーフポジション」といったチーム内言語で、共通の理解を深めてもいる。
5対5の攻防に込められたテーマ。
こうした工夫は、練習メニューにも表れている。
初日の24日のトレーニングのことだ。ピッチにはふたつのグリッドが描かれ、その間に3人のGKが立った。
一方のグリッドで5対5の攻防が行なわれ、もう一方のグリッドでは攻撃2人、守備2人が待ち受ける。攻撃の5人はボールを奪われないようにパスを回し、反対のグリッドで待つ2人へ、縦パスを狙う。
攻撃の2人にボールが渡ったら、守備の5人が反対側のグリッドまでダッシュし、7対2の状況を作って囲い込む――速攻を受けたらすぐに帰陣して奪い返す“リーズスピリッツ”を身体に染み込ませるのが、このトレーニングのテーマ。
しかし、ここには裏テーマも隠されていた。霜田監督が説明する。
「5対5で失わないとか、いかに縦パスを通すかとか。逆に、縦パスを入れさせないとか。GKの練習にもなっている。この練習のテーマはこれだぞ、って説明するけれど、実は裏テーマにも取り組んでもらっているわけ」
ルールがあまりに複雑で、トレーニング自体もスピーディだったから、ピッチレベルではよく分からなかった。スタンドに上がって俯瞰して見て、ようやく理解できた。
さらに驚かされたのが、そのあとに用意されていたトレーニングだった――。
(有望株を続々と成長させる霜田メソッドとは? 後編に続く)
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