“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
異色のGM、水戸・西村卓朗の仕事。
選手とJクラブを育て、街を育てる。
posted2020/02/07 11:40
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
自分は何者なのか。自分はなぜここにいるのか。自分は何のためにやっているのか――。
近年、「そのスポーツだけをやっていればいい」というアスリートの概念を変えようと取り組むプロクラブは増えている。だが、そのなかでも、J2水戸ホーリーホックの取り組みは、サッカークラブのあり方について一石を投ずるものだと思っている。
「地域から必要とされる。共同で課題を解決する。サッカークラブは大きな可能性を持っていると思います」
こう語るのは水戸の西村卓朗ゼネラルマネージャー(GM)だ。
かつてJリーガーとして浦和レッズ、大宮アルディージャで活躍。さらにはアメリカの独立リーグと渡り歩き、2011年にコンサドーレ札幌で現役を引退した。その後、指導者の道を歩み始めると、'13年に関東サッカーリーグに所属するVONDS市原FCの監督に就任。監督を退任してGM兼コーチに就任した'15年以降、フロントの仕事にシフトしている。
西村が強化部長として水戸へやってきたのは'16年。昨年9月に強化部長と兼任でGMに就任した。
こう見ると、元Jリーガーのなかでも、異色の経歴の持ち主と言えるだろう。
サッカーのノウハウを地域に還元。
西村は2017年になると、現場の強化をするだけでなく、フロントとクラブ主導のチーム作りに着手。選手に対するアクション、クラブとしての地域へのアクションとさまざまな施策を打ち出してきた。
「目指しているのはホーリーホックを交流拠点としてどう成り立たせるのか。そのためには(クラブの存在を)知ってもらわないといけないし、地域の人たちの生活の中にどう入っていくかを考えなければいけない。理想形はカルチャーセンターのようにいろんな興味対象を運営していくこと。それは行政がやろうとしてもマンパワーが必要ですし、簡単ではありません。
ならばそれをクラブが引き受けることで、地域に必要とされる存在になることができる。サッカークラブは大きな可能性を秘めていて、僕らは選手の体調管理やサッカースクールなどのサッカーを通じて培ったノウハウを地域の人たちに還元する。そうすることで選手も『サッカーだけをやっていればいい』という概念から、自分と地域の関わりだったり、自分が発信者であることの自覚を促すことができる。結果として社会性を身につけることができるんです」