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全豪制覇21歳ケニンに15歳ガウフ。
大坂なおみを急追する新世代たち。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAP/AFLO
posted2020/02/04 19:00
ガウフ、バーティらを撃破して初女王に輝いたケニン。大坂なおみにとってまた1人、強力なライバルが登場した。
セリーナの衰えと大坂らの躍進。
背景には、セリーナ・ウィリアムズが妊娠・出産によって2017年の全豪優勝を最後に丸1年ツアーから離れたことがある。
1999年の全米オープンから23ものグランドスラム・タイトルを積み重ねたセリーナも38歳。復帰後、ウィンブルドンと全米オープンでそれぞれ2年連続準優勝したのはさすがだが、加齢に加え、育児とのハードな両立の中で衰えは隠せない。
そのセリーナを破って2018年の全米オープンを制した大坂が、あのとき20歳と10カ月。昨年の全豪では21歳3カ月だった大坂がグランドスラム2大会連続優勝を達成して世界1位になった。しかし、生来の<完璧主義者>と自負する大坂にとってナンバーワンの重圧は大きく、スランプに陥っている間に次々と同世代のライバルたちがグランドスラムのタイトルをさらっていった。
全仏オープンは、大坂の1歳上のアシュリー・バーティが23歳1カ月で制覇。ウィンブルドンは当時27歳のシモナ・ハレプが前年の全仏オープンに続く2度目のメジャー制覇を果たしたが、全米オープンでは大坂よりも若い19歳2カ月のビアンカ・アンドレスクが新チャンピオンに輝いた。
そして今回のケニンが21歳3カ月だ。
この流れを作ったのは大坂でもある。
若手台頭の流れを作ったのが大坂と見ることもできる。
遡れば、2017年の全仏オープンで大坂と同い年のエレナ・オスタペンコがノーシードからいきなり優勝の快挙を遂げ、大坂は「私もできるはず」という刺激を与えられたと言ったことがあるが、今のところ<一発屋>感の強いオスタペンコに対して、大坂は前述したように連続2つのメジャー制覇で1位にも上り詰めた。
しかも、史上26人目の女王の座にたどり着く1年前にはまだ50位台だったのだ。世界1位になるまでの1年間をこれほどのスピードで駆け上った選手は過去にいない。
50位前後でくすぶっていた大坂の急躍進が、他の選手、特に同世代や下の世代に与えた自信は大きかったに違いない。
2014年のITFサーキットでの初対戦で大坂に勝利したケニンにしてもそうだ。大坂が16歳、ケニンが15歳というあまりにも幼い対戦ではあったが、「私にもできる」は些細なきっかけからも生まれるし、そのエネルギーはテニスの歴史にもさまざまな<ブーム>を作ってきた。'90年代に伊達公子を筆頭として湧いた日本女子の台頭もその1つといえる。