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全豪制覇21歳ケニンに15歳ガウフ。
大坂なおみを急追する新世代たち。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAP/AFLO
posted2020/02/04 19:00
ガウフ、バーティらを撃破して初女王に輝いたケニン。大坂なおみにとってまた1人、強力なライバルが登場した。
ガウフが得た、大坂を倒す術。
今、国境を越えて若い世代のブームが巻き起こる中、大坂はどうなっていくのだろう。
今大会、15歳のガウフから食らったリベンジには愕然とした。昨年の全米オープンで完勝してからわずか5カ月。あの試合は、試合そのものよりも、大坂が「シャワールームで1人泣くべきじゃないわ」とオンコートインタビューに誘った行動が、多くの人々の記憶により深く刻まれているに違いない。泣きじゃくっていたガウフは「やっぱりまだ15歳の少女」に思えたが、やはりただの15歳ではなかった。
「あのときのことはとてもいい思い出になっている。でも、見ていた人たちにより多くのものを与えたと思う。いつか子供や孫ができたら、あの映像を見せてスポーツマンシップとは何か教えたいわ」
大坂に感謝しつつも感傷に浸っていただけではなく、あの試合からスポーツマンシップ以外のものもしっかり学んでいた。これからこの世界でトップにのし上がっていくためには必ず倒さなければいけない強敵――大坂を攻略する術だ。
「彼女(大坂)のボールのペースがわかったわ。他の多くの選手よりも速いペースで打ってくる。あのときはその準備ができていなかったの。今日はオフシーズンにがんばってきたことを出せた」と言ってのけた。実際、ガウフは絶妙のタイミングでムーンボールなどを使って大坂のペースを見事に崩して、大坂に心地好くプレーをさせなかった。
スポーツマンシップの一方で。
「勝った試合よりも負けた試合から学ぶことのほうが多い」というのは大坂がよく言う言葉だが、まさにそれを実践してみせたのだ。
あのニューヨークの夜の出来事は、メディアもファンも「女子スポーツでは稀に見るスポーツマンシップ」と称え、大坂の純粋さ、やさしさがクローズアップされたが、肯定的な意見ばかりではなかったということはあとからわかった。
「甘く見ていてはしっぺ返しがくる」「負けた選手に対して上からな態度」といった厳しい声も聞こえたのは、今となれば忠告だったようにも思える。わずか15歳のガウフのしたたかさと成長スピードを目の当たりにして、この世界で勝ち続けることの難しさを思い知らされた大会だった。