熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
リオ金メダルのブラジルから学ぶ、
五輪サッカーで結果より大事なこと。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2020/01/28 11:50
リオ五輪金メダリストとなったネイマール(中央)らと若きセレソン。ただ全員が大きく成長を遂げたわけではない。
ネイマールらOA枠も駆使して。
ブラジルサッカー連盟は招集を予定する選手の所属クラブと粘り強く交渉し、23歳以下の選手についてはすでに欧州でプレーしていたCBマルキーニョス(パリ・サンジェルマン)らを含むベストメンバーを招集した。
オーバーエージについても、セレソンのエースであるネイマール(当時バルセロナ)をリオ五輪の前に行なわれた南米選手権を回避する代わりに五輪に出場することでクラブの了解を取り付けた。
残るオーバーエージ2人については、ベストではないがまずまずの選手を呼ぶことができた。そして、大会前に長期合宿を組み、万全の調整を行なう。GSでは苦戦したが、準々決勝以降はコレクティブにプレーできるようになり、目標だった金メダルに手が届いた。
リオ五輪優勝による最大のプラス効果は、2014年のW杯準決勝でドイツに歴史的な大敗を喫したショックが多少なりとも和らぎ、国内のフットボール関係者、指導者、選手、メディア、国民の全員がわずかながら自信を回復したことだろう。
五輪終了後、FWのガブリエル・ジェズス(当時パルメイラス)がマンチェスタ-・シティへ、ガビゴル(当時サントス)がインテルへ移籍した。ただし、これらの移籍はすでに五輪開幕前に交渉がまとまっていたもので、彼らが五輪で活躍したからオファーが届いたわけではない。
全員がA代表で主力化したわけではない。
五輪制覇によって生まれたポジティブなムードは、セレソンにも好影響を与えた。
2018年W杯南米予選は2015年10月に始まっており、ドゥンガが監督を務めていたが、第6節まで2勝3分1敗と不振。リオ五輪前に解任され、2012年にコリンチャンスを率いてクラブ王者に輝いた実績を持つチッチが新監督に就任していた。
そして、リオ五輪後の2016年9月に再開された2018年W杯南米予選のその後の成績は10勝2分。チッチ監督が植え付けた戦術と選手起用が的中したのが快進撃の最大の要因だが、リオ五輪優勝による心理的な効果も間違いなくあった。
ただし、リオ五輪の優勝メンバーがこぞってセレソンでも大活躍したわけではない。
優勝メンバーのうち2018年W杯南米予選で主力としてプレーしたのはネイマール、MFレナト・アウグスト、CBマルキーニョス、FWガブリエル・ジェズスの4人だが、ネイマール、アウグスト(2人ともオーバーエージ)とマルキーニョスは五輪前からセレソンで活躍しており、五輪後、セレソンで新たな戦力となったのはジェズスだけだった。