熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
リオ金メダルのブラジルから学ぶ、
五輪サッカーで結果より大事なこと。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2020/01/28 11:50
リオ五輪金メダリストとなったネイマール(中央)らと若きセレソン。ただ全員が大きく成長を遂げたわけではない。
五輪の好成績が直結したケースは?
結果として、五輪へプロ選手の参加が認められるようになった1984年ロサンゼルス大会以降の五輪(9大会)で優勝した国が2年後のW杯も制覇したことは一度もない。五輪優勝国がW杯で3位以内に入ったのも、1984年五輪優勝のフランスが1986年W杯3位に食い込んだ例があるだけだ。
つまり、森保監督の目標通り、もし日本が東京五輪で金メダルを獲得したら、過去の例にならうと、「2022年W杯カタール大会で日本は優勝できないし、3位以内に入る可能性も極めて低い」ということになる。
ただし、1988年ソウル五輪で銅メダルを獲得した西ドイツが1990年W杯で優勝し、2004年アテネ五輪で銅メダルを手にしたイタリアが2006年W杯を制覇している。これらに関しては、五輪での好成績がA代表の躍進に貢献したと言えるのかもしれない。
日本にとって興味深いのは、2012年ロンドン五輪で初優勝を飾った中堅国メキシコのケースだろう。
MFエクトル・エレーラ(当時パチューカ、現アトレティコ・マドリー)ら多くの優勝メンバーが2014年W杯に出場したが、ラウンド16でオランダに敗れて敗退。6大会連続のラウンド16敗退で、五輪での壮挙は直後のW杯での好成績にはつながらなかった。
また、ロンドン五輪で銅メダルを獲得した韓国は、2014年W杯ではGS最下位。五輪効果はなかった。
リオで初優勝ブラジルも大会前……。
ロンドン五輪で銀メダルを獲得し、2016年にリオ五輪を開催してやはり念願の初優勝を達成したブラジルの場合はどうか。
南米からのリオ五輪出場権は、その前年に行なわれたU-20南米選手権で2位までの国(ただし、2位は北中米地域とのプレーオフに回る)に与えられたのだが、ブラジルは4位。つまり今回の日本と同様、もし五輪開催国でなければ予選で敗退していた。
なおブラジルはこのタイミングで、ガーロ監督(2006年にFC東京を指揮)を解任し、育成年代の指導実績が豊かなロジェリオ・ミカーレを後任に据えた。
ただブラジルの場合、五輪で初の金メダルを獲得するための最大の壁は、23歳以下とオーバーエージ枠でベストの選手を招集できるかどうかだった。ベストメンバーを招集できてしかるべき準備を行なえば、地の利もあるから、優勝の可能性が格段に高められたのだ。