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監督との不和、低迷を乗り越えて。
原口元気を支えた「カラ元気」。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/01/27 19:00
10番を背負い、積極的にコミュニケーション。原口元気はハノーファーを文字通り引っ張る存在だ。
新監督との衝突、やるせなさ。
今季、新監督に就任したミルコ・スロムカとの間が良好とは言えなかったのは、ドイツメディアで何度もその衝突が伝えられたことからも見えてくる。
実際、「他クラブへの移籍は間違いない」とさえ報じられていた。ブンデス1部、あるいは他国リーグへのチャレンジも念頭にあったことだろう。ただし、様々なめぐりあわせのなかで残留を決断した。
そして自分にできることを中心選手としてやろうと努めるなかで、ピッチに立てない状況が続いたのだから、やるせなさ、憤りは相当なものだったはずだ。
やっと試合に出られるようになったと思ったらチームは低迷し、一時は3部降格圏まで落ち込んでしまう。練習に行くことも億劫な心境になっていても不思議ではない。
自分はここまでの選手なのか――。そう自問したこともあったかもしれない。
「楽しもうというか、カラ元気ですよ」
それでも、足を踏み外すことはなかった。
「ここでズルズルいったら、本当にキャリアが終わるなと思ったから。何とか自分自身、踏ん張れたかなというのはあります」
どうやって踏ん張ったのだろう。どうやってやるべきことをまた見つけ出したのだろう。そう尋ねたら、原口はちょっと考えた。そして、当時を思い出しながら、自分が見つけた大事な要素を口にした。
「楽しもうというか……カラ元気ですよ、元気よくやろうって。現実的なことを考えたらすごく苦しい部分があったので、元気よく、このクラブで何か成長できる部分を見つけていこうと思ったんです。自分自身に毎日そう言い聞かせながら練習場に向かっていました。
そのなかで徐々に楽しくなってきて、新しい監督(ケナン・コジャッチ)にすごく信頼してもらえるようになって、新しいポジションでちょっとした結果も出るようになって。踏ん張れたからこそ、そういう部分が出てきたかなって思うんです」