プロ野球亭日乗BACK NUMBER
筒香嘉智の“ラストメッセージ”。
野球をやる子供を増やす方法とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/01/22 11:50
1月18日、出身地の和歌山県橋本市で開かれた交流イベントに参加した筒香。メジャーに行っても少年野球への関わりは続ける。
母親の悲鳴が綴られた手紙。
そしてもう1つ大事なことは、子供に野球をやらせる周辺環境の整備だった。
子供に野球をやらせると、家族も野球一色に染まってしまう、染めざるをえなくなってしまうという声を聞く。最近、筒香に届くファンレターの中で目立って増えてきているのは、子供に野球をやらせている母親たちからの悲鳴を綴ったものなのだという。
「お茶当番やムリな土日のチームへの協力にお母さんたちが困って『野球をやらせたいけどできない』『家族の時間も取れない』という手紙をたくさんいただいています。せっかくの休みなのに一日、野球で潰れてしまって家族で出かけることができないというのも多かったですね」
小学生部の練習時間は週末の午前中だけ。
そうした声を踏まえて筒香は語る。
「現状の日本では長時間の練習をするチームが多いと思いますが、子供たちの身体の負担も考えると、練習を短く集中して内容の濃い練習をすることが大事。子供たちの集中力もそう長くはもたない。
ただ練習をやっているという指導者の自己満足になるのは良くないと思います。逆にそういうのを無くして、子供たちのためのしっかりした教育と指導ができれば、まだまだ野球をする子供たちは増えると思うんです」
堺ビッグボーイズではいわゆる「お茶当番」はなく父兄への負担はできるだけ軽減している。野球以外にも子供と家族の時間が使えるように小学生部の練習時間は週末の午前中に限定し、中学生のチームも週末の3時間程度で、あとは自主練習に当てている。
そうした地道な環境整備が野球をやりたい子供とそれを支える両親の足を、このチームに向けさせている――そこに筒香は少しずつだが手応えを感じている。