第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER
東京国際大学が箱根路で与えた衝撃。
指揮官・大志田秀次監督が目指すもの。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byYuki Suenaga
posted2020/01/16 11:00
2区を走った伊藤達彦はそれまでの日本人最高記録を上回る1時間6分18秒をマーク。
ヴィンセントという大エース候補。
両校に共通するのは、強豪校へと駆け上がっていく過程で、絶対的なエースを擁していたことだ。東洋大には柏原竜二がいて、青学大には神野大地がいた。5区の区間距離が短くなり、“山の神”が出にくい時代となったが、優勝争いをする上でエースの存在は不可欠と言えるだろう。
日本人エースの伊藤は卒業するが、東国大にはもうひとり、留学生ランナーのヴィンセントがいる。まだ1年生だが、第96回箱根駅伝では3区を走り、59分25秒という圧巻の区間新記録を打ち立てた。区間2位に入った帝京大学の遠藤大地(2年)にほぼ2分の差をつけており、来季以降も確実に他校の脅威となり得る。
あとはやはり、中間層の底上げだろうか。
これまではスカウト面で苦労してきたと聞くが、今回の成績で注目が集まり、そこにも追い風が吹くかもしれない。創部当時は、ないない尽くしの状態だったが、今は駅伝部専用の寮があり、トラックやクロスカントリーコースも自前で備える。持久力向上に効果のある低酸素ルームを完備するなど、施設の充実振りは強豪校にも劣らない。
監督は言う。
「高校時代はインターハイにも行けなかった選手や、5000mで15分台の記録だった選手たちがきっちり練習して5番に入れた。そういう夢は描けたと思います。ただし、練習は甘くありません。やはり20kmをしっかり走れて、こうした舞台に立つまでには基本的なトレーニングをやり続ける努力が必要。ただ好きなだけではたどり着けない世界です」
来季の目標は「選手次第ですね」。
来季の目標について聞くと、慎重な言い回しながら、こう自信を覗かせる。
「今回の結果を得て、下級生たちが『次は3位を目指したい』となれば、それなりの練習をしなければならないですし……。そこは選手次第ですね」
選手が主体のミーティングで、新チームはどんな目標を掲げるのか。
さらなる下克上に期待したい。