第96回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

進化した大エース擁する東京国際大学。
神奈川大学は主力の爆発力がカギ。

posted2019/12/06 11:00

 
進化した大エース擁する東京国際大学。神奈川大学は主力の爆発力がカギ。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki / Yuki Suenaga

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箱根駅伝2020取材チーム

箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020

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今回で96回目を数える東京箱根間往復大学駅伝競走。例年以上の大混戦が予想される2020年1月の箱根路では、21チームが健脚を競う。特色豊かな各チームの見どころとキーパーソンを、それぞれ紹介する。

東京国際大学

第96回箱根駅伝予選会:1位
第95回箱根駅伝(前回大会):15位
3年連続、4回目

Key person of the TEAM:伊藤達彦(4年)

覚醒した有言実行の日本人エース。
2区での走りがシード権を左右する。

文=田坂友暁

 箱根駅伝での初シード権獲得へ一直線だ。

 エースの伊藤達彦(4年)を走りに集中させるため、内山涼太(4年)を主将に、真船恭輔(4年)と菅原直哉(4年)のふたりを副将に据えた。そして新入学留学生のイェゴン・ヴィンセントに、仙台育英高から進学したルカ・ムセンビを加えて、2019年シーズンをスタートさせた東京国際大学。

 創部から9年目の新チームは、まず6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会をトップで通過して他大学に衝撃を与えた。

「練習を見ていると、だいぶ力はついてきたな、という手応えはありました。2年連続で箱根駅伝本大会に出場してから、選手たちの意識が変わって、それぞれが前向きに練習に取り組むようになりましたね」

 そう語るのは、創部以来、常に我が子を見守るようにしてチームを支えてきた横溝三郎総監督だ。

 勢いに乗った東国大は、10月の第96回箱根駅伝予選会でも初の快挙を成し遂げる。

 ヴィンセントが1時間2分23秒の全体3位でフィニッシュすると、すぐさまエース伊藤が1時間2分34秒の日本人トップで国営昭和記念公園内「みんなの原っぱ」横のフィニッシュに駆け込んできた。

 その後も4年生の相沢悠斗に山瀬大成、丹所健(1年)に真船、菅原と続々と東国大のメンバーがフィニッシュラインを通過。2位で予選会を通過した神奈川大学に3分26秒もの差をつけて、10時間47分29秒で堂々の総合1位で本大会への出場権を手にした。

伊藤は当初、調理師になろうとしていた。

 その1週間後に迎えた全日本大学駅伝では、初出場というプレッシャーなどなんのその。伊藤が2区区間新記録で区間賞を獲得。その他の選手もほぼ全員がひと桁順位で走り切り、4位で初出場・初シード権を獲得する快挙を成し遂げた。

「今年急に強くなったわけではありません。チームは毎年、着実に成長していました。特に伊藤らの世代の選手たちが、伊藤ひとりに任せるのではなく、自分たちでチームを引っ張るんだ、という思いを持って走ってくれている。そういう上級生の姿を見た下級生が、また自分たちも先輩たちに負けじと頑張ってくれている。今年は、毎年地道に努力を積み重ねてきた4年生たちが力を発揮して、それが結果として現れてくれています」

 大志田秀次駅伝部監督は、伊藤をはじめとする4年生の成長に目を細める。そして、こう続けた。

「箱根駅伝は今年が勝負ですね」

 大志田監督をしてそう言わしめるには理由がある。それがエースである伊藤の存在だ。

「毎年、伊藤は階段を確実に上がってきました。強くなりたいという想いが生活態度や練習への取り組みに表れていましたし、それがチームに好影響を与えています」

 まさに東国大になくてはならない絶対的なエースとして君臨する伊藤だが、最初は前途多難な大学生活のスタートだった。

 高校時代はずば抜けた力を示していたわけではなかった。むしろ、陸上競技は高校で辞めて、調理師の道に進もうとすら思っていた。それでも、その走りに惚れ込んだ大志田監督の熱意を受けて東国大に進学した。

【次ページ】 予選会で見事日本人トップに。

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