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西野朗率いるタイ、東京五輪なるか。
時間の使い方は未熟も気概はある。 

text by

井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byKyodo News

posted2020/01/14 11:50

西野朗率いるタイ、東京五輪なるか。時間の使い方は未熟も気概はある。<Number Web> photograph by Kyodo News

オーストラリア戦に負けたとはいえ、開催国のファンに応える西野監督の表情には手ごたえを感じる。

「時間の使い方というものが」

「90分間のフィジカル……、最後のパワープレーを受けたダメージがあったと思うけど、そこが追いつかなかったと思います」と西野監督は振り返った。「フィジカルの差はあらかじめわかっていたので、ボールをしっかり動かして、コンタクトをあまり受けないように攻撃を仕掛けていこうとしました。前半は狙い通りにスピーディーな展開ができたけれど、後半にスプリントが効かなくなっていった」

 そして豪州のフィジカルを讃えながらも、経験が浅い自軍の選手たちに「時間の使い方というものが」物足りないと感じているようだった。

西野監督が称えた豪州のフィジカル。

 豪州の極めて重要な逆転勝利の立役者となったダゴスティーノは「タイにはすごく苦しめられた。とてもテクニカルで、すばしこい若い選手もいたよね」と相手の印象を伝えた。

 東京五輪へ行く自信を問われると、「もちろん、あるよ。このチームなら絶対に行ける。選手の質も高いし、(的確な采配で逆転勝利を手繰り寄せた)監督の質も高い。今日は難しい展開を強いられたけど、監督が手助けしてくれた。諦めない姿勢とちゃんとしたフットボールを見せることができて嬉しいよ」と話した。

 西野監督が「まったく落ちなかった」と感嘆したフィジカルについては、「Aリーグは身体的に本当に多くを求められるリーグなんだ。プレシーズンは長く、厳しい走り込みもする。フィットとストロング、これがオーストラリアのメンタリティだからね」と瞳を輝かせて誇らしげに語った。

 西野監督のもと1968年以来の五輪を目指すタイと、低迷を乗り越えて3大会ぶりの五輪を切望する豪州。本来なら、どちらかが決勝トーナメントで日本と対戦するはずだったけれど、すでにその可能性は消えた。

 日本の初戦敗北に「驚いた」と西野監督は言ったが、実際に試合を見れば、現在の彼が率いる代表の方が印象は良かった。未熟だとしても、気概やひたむきさの感じられる好チームであることは間違いない。

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