欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
リバプール右SBアーノルドが持つ、
ジェラード級の潜在能力って何だ?
posted2020/01/14 11:40
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
2000年代初頭、イングランドは右サイドバックの人材が枯渇していた。
一定のレベルに達していたのはガリー・ネビル唯1人。実弟フィル・ネビル、ダニー・ミルズ、ウェズ・ブラウンという選手たちは一長一短というか、他国なら代表に招集されないような選手も少なくなかった。
10年後、マイカ・リチャーズ、フィル・ジョーンズ、クリス・スモーリング、ルーク・ヤングなど、いまではDFの体を成していない者、顔と名前が一致しない者がイングランド代表のユニフォームをまとう、ある意味で絶望的な時代が訪れた。リチャーズに至っては上半身に余計な筋肉をつけすぎて、天性のスピードを失う愚まで犯している。
しかし2020年を迎え、イングランド代表の右SBは人材の宝庫となっている。マンチェスター・シティのカイル・ウォーカーですら存在感が霞むほど強烈なタレントがズラリと顔を揃えている。
変幻自在のキックでアシスト量産。
今夏のヨーロッパ選手権、2年後のカタールワールドカップで定位置をつかむ可能性が最も高いのは、リバプールのトレント・アレクサンダー・アーノルドだ。
昨シーズンは13、今シーズンも9アシスト(1月10日現在)を記録している事実からも分かるように、右足から繰り出されるパスは正確無比。長短緩急を使い分けて、インステップ、インサイド、アウトサイド、インフロント、アウトフロントと状況に応じてパスの種類を多彩に操っている。
右SBでありながらゲームメイクでも魅せるのだから、唯一無二の存在といって差し支えない。
スピードがあり、1対1にも強く、後半追加タイムになってもスプリントを繰り返せる強靭な体力も兼ね備える。不測の事態、例えば、長期の欠場を余儀なくされる大ケガでもしない限り、右SBはアレクサンダー・アーノルドのエリアになるに違いない。