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ピコピコハンマーは暴力ですか?
野球指導にユーモアを導入する方法。 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/01/07 07:00

ピコピコハンマーは暴力ですか?野球指導にユーモアを導入する方法。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

野球に限らず、部活でのパワハラは問題になっている。ユーモアを導入する方法論は真剣に検討する価値があるテーマだ。

野球の現場にはユーモアがなかった。

 その後もつらつら考えているうちに思い当たった。「暴力」の反対側にあるものって、もしかしたら「ユーモア」ではないのか。

 この国の、今までの野球の現場にいちばん存在しなかったもの……それが「ユーモア」ではなかったか。

 ほかのスポーツはよく知らないが、少なくとも「アマチュア野球」の現場にユーモアの居場所はなく、その代わりに、ユーモアの反対側にある「暴力」や「暴言」が幅を利かせていた。

 それが、多くのアマチュア野球の現場の“ほんとのところ”だったろう。

「お前、歯を見せて笑っただろう!」  

 ずいぶん昔の話ではあるが、筆者の学生時代にはそんな理由でなぐられたことが何度もあった。

 グラウンドに笑いは有害であり、ユーモアはタブーであり、グラウンドとは、ひたすら苦悶の表情を浮かべながら、つらく苦しいだけの、汗と、場合によっては血を流す場所として“神格化”されていたのだ。

真剣な喝に、ユーモアをまぶして。

 グラウンドにユーモアと笑いがあってはいけないのか。それらはスポーツにとって、ほんとに有害なものなのか。

 私も何度か見たことがあるが、ビートたけしにピコピコハンマーでピコンとやられた人は、その後必ずパキッとする。表現を変えると、「気合い」が入る。

 それは、ナゼか?

 ピコピコハンマーを取り出すたけしは、必ず真剣な表情である。

 そしておそらくは、真剣な気持ちで「ピコン! ピコン!」とやっている。

 つまり、ユーモアというきな粉をまぶして、真剣な喝を入れるのだ。

 真剣勝負の現場の喝の入れ方として、今の時代、このやり方は悪くない方法のように思う。

【次ページ】 ピコハンが登場した時点で笑ってしまう。

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