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栗山監督の投手起用に戸惑った令和元年。
日本ハムの「非・常識」戦術を解読!
text by
えのきどいちろうIchiro Enokido
photograph byKyodo News
posted2020/01/01 11:40
深謀遠慮の智将・栗山英樹監督。その「非・常識」戦略で、2020年はどんな驚きの策を見せてくれるか……。
堀瑞輝と金子弌大、その起用法の不可思議。
目をつぶると例えば堀瑞輝の姿が浮かぶ。
堀はオープナーをやったり、セットアッパーをやったり、負け試合のイニングイーターをやったりして混乱していた。登板過多になり球威を欠いて、打ち込まれ、傷ついていた。悄然とマウンドを降りる姿が忘れられない。本来なら先発で長いイニングを任せ、自信をつけさせたいドラ1だ。それが便利屋みたいになって、消耗していた。堀はどう気持ちをつくればよかったのだろうか。
あるいは金子弌大だ。
彼もオープナーをやり、2番手のイニングイーターをやり、ハムでは1年目だから文句も言わず、淡々と役割をこなしていた。が、身体が疲れてキレがないときは、コーナーを狙った窮屈なピッチングになる。淡々と役割をこなしていると、ギラギラしたものも引っぱり出せない。あんまりうまくいかなかった。結局、登板間隔を空けて、フツーの先発投手として気持ちをつくってもらうほうが得策だというところに落ち着いた気がする。
加藤の起用ですっかり混乱してしまい……。
あれをどう呑み込んだらいいのか。
僕は最初、「オープナー」「ショートスターター」は加藤貴之の専売特許になるんじゃないかと思っていた。他の投手でも試すだろうけど、ロールモデルをつくるのは加藤貴之だ。加藤に関しては「選手が先」なのだった。「加藤は1巡目をほぼ完璧に抑える」というデータには説得力があった。「加藤の特性を生かす」が先にあって、そこから産まれたのがオープナーという順番だ。選手を鋳型にはめるのでなく、選手の形に鋳型をつくる。加藤は「4・02 雪の仙台」から3カード連続で予告先発に立ち、それは大変面白かった。
が、加藤の専売特許ではなかったのだ。
夏場には有原以外は全部、小刻みな継投だった。負け試合ばかりだからショートスターターなのか、相手打線につかまって降板なのかよくわからない。栗山英樹監督も苦しそうだった。
僕はよくわからなくなっていた。これは栗山さんが望んでやっていることなのか。それとも球団主導でやらされてることなのか。
オリックス吉田正尚などへの大胆シフトもそうだけど、栗山さんが先か、球団コンセプトが先か。イニシアチブは一体、どこにある? これもファイターズのタマゴが先か、ニワトリが先か案件だ。