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プロ野球広報視点の「危機」の解釈。
時代の変化を楽しんでほしいと願う。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2019/12/25 11:50

プロ野球広報視点の「危機」の解釈。時代の変化を楽しんでほしいと願う。<Number Web> photograph by Kyodo News

今季のセ・パ両リーグの観客動員数は、いずれも過去最多となった。野球の魅力を伝える球団、選手の取り組みにも目を向けてほしい。

過去最多を記録した観客動員数。

 2019年シーズン。セ・パ両リーグの観客動員数は、それぞれ1486万7071人、1166万9891人だった。2005年に実数発表に踏み切って以降、いずれも過去最多を記録した。「野球人口の減少=野球の危機」は数字を根拠に語られる。たが、その構図を肯定しきれないデータも実在するのである。競技人口は減っているが、スタジアムに来るライトな観客やコアなファンの数はむしろ増えているのだ。この事実から目を背け、安直に「危機」と捉えることは違うと考える。

 私はプロ野球界で働き始めて、まだ3年目を終えようというところである。そのため我が事のように力説できないが、各球団でプロ野球、野球のために心血を注いでいる。選手も個人差はあるが、同様である。現職に就き、球団内からの視点ができ、その努力を知ったのである。

 性別、年代を超えて多くの方々に野球の魅力を知ってもらい、接してもらえる機会が増えるように様々な施策を打つ。かつて成人男性が入場者のコア層だったが、子供や女性を意識して様々なイベントも仕掛けている。

 業務で各球場を訪れる機会があるが、それぞれに特色がある。客層にも球団のカラーがあるが、昭和の球場のスタンドの風景と比べても全体的に女性の割合が多い。子供も同様であるが、そこは顕著な違いを感じる。若い方々も、少しずつ増えているように映る。

観客は多様化し、裾野は広がった。

 これは1つの例ではあるが「野球人口の減少=野球の危機」は、プロ野球がエンターテインメントとして成立、醸成されていっている今、プロ野球界からは感じることがない。野球人口は減っていても、観客は多様化し、逆に裾野は広がっていると確信している。あくまで一例ではあるが「野球人口の減少=野球の危機」のような断片的な視点で、捉えてはいけない。私は、そう考える。

 野球は生きている。生き物である――

 時を重ね、野球も流れていく。野球人口の減少と相反する観客動員の推移、観戦スタイルと客層の多様化と随時、変化をしてきた。そして、今がある。すべて含めて、野球をこれからも楽しんでもらえたらと願う。

【次ページ】 野球の今、未来を楽しむ。

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