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モドリッチに神様は再び微笑むのか。
「世界No.1」であり続ける難しさ。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2019/12/19 20:00
エル・クラシコではベンチスタートとなり、10分程度の出場となったモドリッチ。スコアレスドローの戦況を変えるには少し短すぎた。
「世界一」であり続けること。
ただ、モドリッチには名誉とともに重圧もあったはずである。
バロンドーラーとして迎える翌年は苦しむ、というものだ。
クリスティアーノ・ロナウドとメッシがずっと取っていたから忘れていたが、過去この名誉を手にした選手はその時、事実上のピークを迎えていたように感じる。
例を挙げれば、2005年の受賞者であるロナウジーニョ。
同年11月のクラシコ。セルヒオ・ラモスをぶち抜くなどの2得点は、敵地サンティアゴ・ベルナベウからスタンディングオベーションを贈られたほどの凄まじさだった。しかし絶頂期で迎えたはずの翌年、ドイツW杯はベスト8で終わり、バルセロナでちょっと遊び過ぎたこともあって、王様が気づけばメッシへと変わっていた。
21世紀初頭から見てみても、2001年オーウェン、2002年ロナウド、2003年ネドベド、2004年シェフチェンコ、2006年カンナバーロ、2007年カカ……その時がまさにピークだったのだな、と今になって思う。
世界一のサッカー選手となったその後も、世界一であり続けることは難しい。
バロンドールから1年、移籍話も。
2019年のモドリッチは、1つひとつのプレーを見ると相変わらず素晴らしかった。しかしどうも「ついていない」印象がついて回った。
2018-19シーズン、マドリーは混乱期にあった。主導権を握ろうとしたジュレン・ロペテギ体制が2018年を越せず、サンティアゴ・ソラーリに監督が替わっても好転せず、結局ジネディーヌ・ジダンがわずか9カ月で帰還……。2度の監督交代の中でモドリッチはほぼ先発に名を連ねたが、勤続疲労は否めなかった。復帰したジダン監督がモドリッチのコンディション低下を懸念したという話が出たのも、しかたがないことだと思う。
2019-20シーズン序盤戦も、モドリッチになかなか運がめぐってこない。開幕戦のセルタ戦でまさかの一発レッドで退場となると、9月の国際Aマッチウィークで右足内転筋を痛めて数週間の戦線離脱。その間に代役を務めたウルグアイ代表の21歳フェデ・バルベルデが急成長。そしてロドリゴという新星がリーガ、CLで大活躍したこともあり、背番号10がいつのまにか“脇役”に追いやられた感があった。
何かと騒ぎがちなメディアは「モドリッチ、移籍か!?」とパリ・サンジェルマン、ミランの名前を挙げて、去就ネタで盛り上げようとする。つい1年前は「C・ロナウドとメッシからバロンドールを取り戻した男!」と絶賛されたモドリッチなのに、こんな扱いをされるだなんて……と思うほどだった。