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モドリッチに神様は再び微笑むのか。
「世界No.1」であり続ける難しさ。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2019/12/19 20:00
エル・クラシコではベンチスタートとなり、10分程度の出場となったモドリッチ。スコアレスドローの戦況を変えるには少し短すぎた。
“らしさ”が戻ってきた11月。
流れが好転したのは、11月のレアル・ソシエダ戦である。この試合で取り沙汰されたのは直前の代表戦で「ウェールズ、ゴルフ、マドリー」という序列が書かれた国旗を手にしたベイルに対しての大ブーイングだった。
しかし試合をちゃんと見直してみれば、ピッチの主役はモドリッチだった。ベンゼマの同点弾とバルベルデの勝ち越しゴールをおぜん立てし、最後にとどめを刺すボレーシュートと全得点に絡んだのだ。
クロスとパス精度、相手のチェックに慌てないスキル、そしてチャンスを見逃さずゴール前に走り込む意欲。3つのシーンはすべて、モドリッチらしさにあふれていた。
10月に開催されるはずのクラシコが開催延期となったことで、結果的に上り調子で大一番に――。いよいよ運がめぐってきたかに見えた。現地メディアも戦前からベイルとベンゼマの2トップの下にモドリッチが鎮座するシステムを予想していた。
しかし本番が始まってみると、大方の予想を裏切って先発したのはイスコだった。
バルベルデの回収、イスコのチャンスメイク。
この日もモドリッチは、ついていなかった。
ジダン監督のゲームプランがハマりすぎたのである。
マドリーは、バルサのビルドアップを前線から制限していく中で、フェデ・バルベルデのボール回収がほぼ完璧で、イスコもたびたびチャンスメイクした。マドリーが上手く試合を運び、なおかつスコアが0-0のまま進んだから、ジダン監督も動きづらかったのだろう。ロドリゴと一緒に投入されたモドリッチに与えられたのは、10分強とアディショナルタイムの5分だけ。モドリッチらしいキープと裏を狙ったパスは、数度だった。
それでもマドリーは敵地カンプノウでメッシ、スアレス、グリーズマンにほぼチャンスを与えず90分間を終えた。17年ぶりのリーガでのスコアレスドローについて、マドリー界隈のメディアである『マルカ』は「カンプノウで何というパフォーマンスだ!」とも評している。