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サニブラウンが100mに出場できない?
日本陸連「リレー優先案」の波紋。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2019/12/22 09:00
12月16日、日本陸連の年間表彰セレモニーに出席した桐生(中央)ら4×100リレー代表。サニブラウン(右から2番目)は得意とする200mに専念することになるのか。
故障者が出た場合の対応が難しい。
さらにレースが実施される新国立競技場のトラックは、硬くて反発力が強いため選手の身体に負担が大きいと見られること、リレーメンバーのエントリーがリオ五輪や世界選手権の6名から5名に減り、故障者が出た場合の対応がより難しくなったこと。
そうした背景もあり、麻場一徳強化委員長が「リレーの金メダルが期待されているので、(個人種目は)1種目にして、リレーに力を使ってほしい」とコメントしているように、個人種目の制限案を打ち出すことになった。
ただ、選手はそれではおさまらない。
100m、200mともに強い選手からすれば特に、受け入れがたい。
サニブラウンは「個人があってのリレー」。
例えば、サニブラウンは、「個人があってのリレー。自分は個人でメダルを取るために練習をしている」とし、個人種目をしっかり戦った上でのリレーであるという思いを明かしている。
陸連と選手側の、優先順位、価値観の違いがそこにある。
陸連としては、国民や日本オリンピック委員会(JOC)、メディアなどから寄せられる期待に「応える務めがある」という考えがある。
日本が目標とするメダル数も打ち出され、過去最高の結果を、という期待(ときにプレッシャー)もある。JOCは金メダル獲得の目標を30個としている。過去最多の前回の東京五輪、2004年のアテネ五輪の16個からほぼ倍増させるものだ。
その中では、選手個々の事情よりも、メダルの数を、よりよい色のメダルを、という発想も生まれがちだ。個人の権利ではなく、組織が優先される。その組織とは陸連のみではなく、より広い意味合いも含まれる。