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J3最下位から一気に優勝の北九州。
J2昇格に至る密かなる革命の記録。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/12/10 11:50
J3最小失点の堅固な守備陣をベースに、目先の勝利を追わず中長期的な戦略で優勝に至ったギラヴァンツ北九州。
大事なのは「少々負けてもぶれないこと」。
そこから「順位が落ちる」と思われたが、落ちなかった。小林自身も11月24日のJ2昇格決定後、「落ちるかなと思った」と口にしたのだが。
J2昇格決定後から選手に「いったい何が変わったのか」と話を聞いていったが、様々な要素が出てきた。筆者が一番印象的だったのは11・12月のJ3最優秀選手に輝いたボランチ加藤弘堅の言葉だ。「あくまで個人の考えで、チームの方針がそうであればそこに従う」と十分に断ったうえで、こんな話をしていた。
「少々負けてもぶれないこと。選手としては監督にそうあってほしいと思うものです。今季の小林監督はそうでした」
「選手同士でピッチ上の判断ができるように」
開幕ダッシュが落ち着いた6月、上位対決に勝ちきれない時期があった。その頃、練習取材で小林監督とこんな言葉を交わした。
――この先、もっと疲れが出てきて走れなくなる時期が来る。そうも予想できますが。
「確かに疲れは出てきますよ。でも、より走れるようになったと見えるはずです。ここから練習を積んでいって、選手の距離感がよくなってきますから」
かくして、小林のぶれない戦術方針は、夏前のペースダウンを経てシーズン終盤に大きく花開いた。守備時は4-4-2がベース。FWは縦に並び、一方がファーストディフェンスに入る。攻撃時はボランチが守備ラインに下がって3-5-2にシフトチェンジしつつ、サイドが高い位置を取る。
「攻撃時に守備を3枚にする戦い方をしてきましたが、終盤には4枚のまま攻められるようになった。3と4、両方の選択肢を持てるようになったんです」(小林監督)
これにより、首位チームとの対戦で警戒されるなか、相手の分析を上回るプレーを出せた。同じ「3枚」でもボランチが下がる形に加え、守備ラインが横にスライドする形も少しずつではあるが見せ始めた。
「コレクティブ」を打ち出しながら、選手が決め事に頑なになりすぎることもなかった。DF岡村和哉は、終盤の戦いについて「選手同士でピッチ上の判断ができるようになった」という。